がん⑫ 大事な決断 支える情報
医療従事者の引き出しを開ける。
あらかじめ取捨選択された医療者からの情報だけでは足りないと感じることも多いことでしょう。どのような情報が足りないのか、主治医などに上手に伝え、引き出しにしまってある情報を出してもらえれば世界が広がります。ただ、どこにもない情報を求めても出てきませんし、あるはずの情報を出してほしいと要領よく伝えるためには、「勉強」が欠かせません。
「勉強」を大きく分けると、セカンド・オピニオン利用と自習と患者会参加になります。
この中で特に注意の必要なのが自習です。それまで受けた説明を理解したり、ちょっと進んだことを知るのに本やインターネットを読んだり市民講座などに行ったりするのは役に立ちます。しかし、それを鵜呑みにしてはいけません。特定の治療法を売り込んだ本やサイトに並ぶ聞こえのよい情報はあくまで一般論で、実際には一人ひとり状態がまったく違います。中にはウソも混じっています。
というわけで念頭に置いておいていただきたい10カ条をまとめました。参考にしてください。
なお、治療内容以外の情報であれば、専門の医療職に相談した方が早いかもしれません(2012年1月号参照)。とっかかりが分からないという人は、がん拠点病院などに開設されている相談窓口をまず訪れてみてください。きっと適切な相手を紹介してもらえます。
患者会の活用
同じ患者同士で、気軽に情報交換できる患者会は、情報だけでなく、気持ちを共有できるというメリットも大きいようです。ただし、がんの患者会は組織形態や活動の内容が実に様々です。活動別に大まかに分類すると、
●病院で治療した同じガン種同士の会(院内患者会)
●ガン種・病態(リンパ浮腫など)を共にする会
●末期医療やホスピスに関わる会
●がん治療の勉強や先進治療導入を推進する会
●代替療法を推進する会
●癒しを主目的とする会
となります。
自分がどんな支援、情報を求めているかよく考えた上で選ぶようにしてください。性格が合わなければ、かえってストレスです。会の雰囲気に馴染めない、人間関係に疲れた、などの理由で足が遠のく方もいらっしゃいます。それはそれでいいのです。がんという病を抱えながら、さらに心的負担を被るようでは意味がありません。
それでも自分に合った患者会に出会えればラッキーですよね。有益な情報を交換することで、前向きに治療に取り組めます。悩みや苦しみ、時には喜びを仲間と分かち合うことで、がんと心で対峙できます。自分を取り戻せる場所の一つになることでしょう。家族も一緒に参加して、家族自身の心の支えとなっていることも多いのです。
家族にもケアを がん患者の家族には、患者本人と同程度かそれ以上の精神的負担がかかります。患者の身の回りの世話や経済的な問題など、現実的な負担も多かれ少なかれ出てきます。がんが「家族の病」とも言われる所以です。▽患者ががんと告げられた時から、家族に様々な感情(動揺、怒り、自責感、不安、落ち込みなど)が生じます。そのような感情の変化は一般的にみられる通常の反応です。しかし家族は、患者本人に心配をかけることへの気づかいから、心のケアの専門家への相談をためらいがちです。まずは、自分自身のつらさを認めることが大切。不安が募ってイライラしたり、眠れない、あるいは一日中気分の落ち込んだ状態が、2週間以上続いて生活に支障をきたす場合には、心の専門家に相談することが必要です。