がん⑫ 大事な決断 支える情報
ある調査では、末期がんで余命1~2カ月になった場合に、ホスピス・緩和ケア病棟での療養を望む人が5割を超えました。しかし同時に、6割超が「自宅で過ごしたいが実現は難しい」と答えています。
在宅療養をあきらめてしまうのは、家族への負担や在宅医療の不備のため。それでも近年では、病院の主治医、家庭医、訪問看護介護センターという3本柱を活用することで、不可能ではなくなってきました。
ただし早めに準備に動き始めないと、介護保険の認定が間に合わないなど、サポート体制を十分に組めません。
進行がんという現実を受け容れた時、患者の胸中には「いかに最期を迎えるか」の模索も始まっていたはずです。最期の迎え方を、医療者が強制することはできません。気持ちが固まったなら、早めに医療スタッフや家族に伝えましょう。
尊厳死という選択
「いかに最期を迎えるか」は、実は万人に共通する問題です。がんの場合それほど多くありませんが、近年は患者の希望や意思に関わりなく、医療機器によって生命の時間を引き延ばすようなことが起きています。
このように人工呼吸器など延命装置によって「生かされている」状態が続くことを、必ずしも望まない人たちもいます。1970年代後半頃から、病気やケガにより「不治かつ末期」の状態なった時に、自分の意思で延命措置をやめてもらい、人間としての尊厳を保ちながら死を迎える尊厳死を求める動きが、徐々に盛んになってきました。
大事なことなので繰り返します。最期の迎え方を、医療者が強制することはできません。悔いなき決断のため、場合によっては健康なうちから、定期的に家族と話し合ってみてください。それがイザという時の情報の集め方、接し方にも生きてくるはずです。
尊厳死を希望する場合 尊厳死を実現するには、心身とも健全な時に、あらかじめ自分の意思を文書で明示しておくことが必要です=右図。▽ただ法律上、日本ではまだ尊厳死は認められていません。▽ですからリビング・ウィルの書面も、必ずしも100%の法的効力を持つとはいえません。が、公正証書等の形で作成し、提示した際の医師の尊厳死許容率はかなり高くなると言われています(医療行為を中断することは難しいので、あらかじめ提出します)。▽なお、混同しやすいのが安楽死。安楽死は、助かる見込みがなく耐え難い苦痛の患者を、医師が積極的な医療行為で早く死に導くことです。患者を思ってした行為でも、日本では医師は殺人罪に問われます。