梅村聡の目㉔ 良い国会議員を選ぶ方法 まず名前で検索してみる
「結局のところ、選挙で誰を選べばよいのか分からない」。前回の衆院選で多くの方が思ったことではないでしょうか。参院選も目前に迫ります。今回は、皆さんがより自分たちにとって必要だと思える国会議員を選ぶためのポイントをご紹介します。
昨年末の衆院選は、民主党と自民党の政権争いに「第三極」が加わり、原発問題やTPPなど争点も盛りだくさんだったため、国民からの注目度は高いと思われていました。しかし蓋を開けてみたら、小選挙区の投票率は戦後最低でした。
公示直前まで政党が乱立して争点が見えにくくなったことなども影響した可能性はありますが、やはり国民の政治不信は根強いのだと感じます。
国会議員は何をしているのか分からない遠い存在で、誰を選べばよいか分からないので、選挙にも行かない、という悪循環を起こしているのでしょう。しかし、国民一人ひとりの意思を反映するのはやはり選挙であり、社会を変えていくための大切な手段です。「選挙に行ってよかった」と思える国会議員を選んでほしいと思います。
国会議員の一日とは
国会議員を身近に感じるには、まずその一日がどうなっているか知るのが早いと思います。衆院と参院で若干違いますが、私を例に説明します。
●朝7時~ 質問レク(政務三役のみ)......当日の国会の委員会での議員側からの質問にどう答えるか、官僚からレクチャーを受ける。その分野に詳しければすぐ理解でき、おかしいと思う点を指摘できるが、そうでなければ時間がかかるため7時からでも間に合わない。
●朝8時~ ①朝食会......朝食を食べながら、業界関係者や企業、市民など様々な人たちから話を聴く勉強会。例えば予防接種の現状を知りたいと思ったら、公衆衛生の専門家や医療関係者、研究職などから現状と問題点を聴く。もちろん自分が話したり、意見交換会になる場合も。突発的な予定が入ることも多い夜と違って、朝ならば確実に約束でき、勉強できる。海外から客人を招いていたり、どうしてもこの話を聴きたいという場合だったりすると、さらに早朝になることも。真面目に勉強しようと思えば、ゆっくり家で朝食を取っている余裕はないはず。
●朝8時~ ②党の部門会議......部門会議とは、厚生労働、文部科学、農林水産、外交防衛、国土交通など省庁に対応した様々な分野の政策について国会議員が議論して決定する場。通常は議員会館で開かれる。官僚や専門家が話題を提供し、議員が質問し意見を言う。法案や予算に関する党内の意思がおおよそ方向づけられるため、政策を進める上で最重要の会合だと言っても過言ではない。参加は自由だが、欠席だと「その分野についての発言権を得たいという意思がない」と見なされる。若手議員にとっては、自分をPRし政策に磨きをかけることのできる登竜門でもある。積極的に参加していれば、他の議員や官僚、専門家から一目置かれるようになる。手前みそだが、私は党の厚生労働部門会議の副座長を2011年8月から翌年9月まで務めた。無遅刻無欠席で通したため、党内の社会保障政策についてはそれなりに重要な位置を占めていると感じている。
●9時半~ 議員総会......党内の参議院議員全員が参加し、党の運営や国会活動に関する重要事項を確認し決定する。国会状況の報告や摺り合わせなども行われるため、ここで党内の雰囲気や全体の様子を把握しておくことが大事。
●10時~ 参議院本会議......委員会で可決された法律を採決する。
●午後~ 参議院厚生労働委員会......付託された法案について、提案理由の説明があり、質疑応答を経て採決される。国会議員の質問に対し、政府側の政務三役などが答える。朝7時からのレクはこのため。部門会議と同じように様々な委員会がある。政府側の答弁にアドリブでどう切り返すかで、議員の能力が分かると言っても過言ではない。掘り下げて勉強していれば、国が具体的な行動を起こすような答弁を引き出せることもあるが、勉強不足だと煙に巻かれて終わる。私はこのやり方で、末期がん患者の介護認定、勤務医の労働環境改善、生活保護制度での金融機関本店での資産・収入一括照会(これまでの『梅村聡の目』参照)について、行政側が動くという言質を引き出した。他人に質問を作らせているような国会議員には、こういうことはできない。
●夕方~ ①官僚、業界関係者からのレク、市民からの陳情など......議員会館内の事務所で、官僚や業界関係者、専門家から様々な分野の現状や問題点、今後の政策についての方針などを聴く。官僚が事務所に来るのは、進めている政策について文句を言わせたくないという意図もあれば、今後議員が力を付けてきた時のためのパイプ作りの意図もある。部門会議で注目されてアポが入ることも多く、重要人物だと思われるほど訪問者は増えるため、事務所に行列のできている議員ほど力があると言える。
●夕方~ ②議員連盟の集会など......その政策に関心のある議員が集まり、立法化や予算確保に向けた活動や勉強会を行う。多くの会合が開かれる時間のため、すべてに出席できないこともあり、秘書が代わりに参加するなど、上手に情報収集することも大切な能力の一つ。
●18時以降~ 会食......国会議員同士の会食と、有識者や研究者などとの会食と、2パターンある。私は意識して後者を優先して、なるべく多くの職種の方と会い、話を聴くようにした。国会議員というと「料亭の個室で宴会」のイメージがあるかもしれないが、重要な情報が話し合われる可能性を考慮すれば多くは個室になるというだけの話。
●21時以降~ 議員宿舎......会食後は早々に戻って、次の国会質問や部門会議での発言を準備する。資料を読み込むなど勉強のための重要な時間でもある。夜遅くまでお酒を飲んでいるようでは、こういう時間を取れない上に早朝からの予定も入れられない。
●土日祝日 あちこち......多くの議員は地元に戻って後援会との交流や地元の行事に参加する。それも大事だが、私は、市民集会や学会、専門職団体、お寺などから呼ばれ、全国で講演をしている。聴衆は10人ぐらいの小規模なものから500人以上の大規模のものまで様々。何が今のトピックで、どう意見が分かれているのか、国が何を考え何をしているか、分かりやすく国民に伝えることが大事だと考えている。直接の選挙活動になるわけではないのだが、遠回りのようでも国民の政治家に対する信頼感につながる。
早寝早起き
真面目に国会議員の仕事をしていれば、かなり忙しいことが分かると思います。やる気があり、力のある政治家ほど、早寝早起きになるものです。毎朝駅で街頭演説をすることも大事なことですが、バランスがとれた議員活動が重要なことはいうまでもありません。
さて、では真面目で力のある国会議員をどうやって見分ければよいのでしょうか。行動内容が逐一報告される場があるわけではありませんし、公表できない機密事項を扱っていることもあるため、その実績を正確に把握するのはとても難しいのが実情です。
それでも、まず自分の選挙区の候補者のプロフィールを確認し、部門会議の座長や副座長の肩書を持っているか、政務三役のどんな役職を経験したのか等を確認するのは一つの方法です。特に、初当選後、早い段階でそれらの役職に就いていれば、周りから一目置かれている政策通である可能性が高いです。現在の田村憲久・厚生労働大臣も、自民党の厚労部会で座長を務めておられました。また手前みそで恐縮なのですが、私は2007年に当選した参議院同期の中では最短で厚生労働部門会議副座長、厚生労働大臣政務官になっています。
もう一つの方法は、インターネットの検索エンジンに候補者の名前を入れて検索し、結果画面を何ページか見ていくことです。すると普段どんな活動をしているか大体見えてきます。熱心な政治家なら多種多様なページが出てくるでしょうが、そうでない議員は本人のホームページや限られた内容のみということが多いのです。
そうやって気になる政治家を見つけたら、演説会やタウンミーティングなどに足を運んでみてください。政治家は有権者と話すことを喜びますから、ぜひその場で声をかけてください。しばらく話せば、人柄やどれほど政策に通じているかが分かるでしょう。以前もお伝えしましたが、政治家はたとえ少人数であっても、呼ばれたら喜んで出かけます。「日曜お茶会」のような気軽な感じで、政治家と話をする場を作ってみてください。
宝石の原石見つけて
本来は、政治家の過去の活動を検証できる場がないといけません。そうでなければ、力のある政治家かどうかなど、国民側から判断できなくて当然です。ということで、まずは自分から始めようと思います。これまでの主張や記録をホームページに掲載するなどしようと考えています。
活動の検証が当たり前になって、政治家の政策実現能力が一目瞭然になれば、自分たちにとって必要な人であるかどうか判断しやすいと思います。そしてそれが、必要な政治家を当選させていくための選挙制度の改善にもつながると思います。
たとえ話ですが、現在のマスメディアには、キャラクターの濃い有名政治家ばかりが露出している状態だと思います。実際には、もっと多くの政治家が様々に腕を磨いています。中には、国を良くするための宝石の原石のような政治家もいるはずです。
次の参議院選挙も目前です。国会議員に興味すら持たれていないのが現実かもしれませんが、少しでも活動や人柄を知ってもらうため私も努力していきます。この国を私たち一人ひとりの力で良くしていくため、そのパートナーとなる政治家を、ぜひとも皆さんの目で見定めていただきたいと思っています。