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梅村聡が斬る② 早期の国政復帰めざして力を蓄えます

 参院選が終わってから色々考えてきましたが、多くの方のご意見もいただき、できる限り早期の国政復帰をめざすことにしました。それまで大阪大学や日医総研で医療政策等を議論したり、地方に出かけて多くの人たちの話を聴いたりして、政治家としての力を蓄えていきます。

 民主党を離れ、大阪大学大学院に復帰するとともに、「日医総研」の客員研究員に就任させていただくことになりました。

 参院選終了後、私の今後について様々なアドバイスやご意見、お誘いをいただきました。比較的多かった意見は「次は衆院選をめざしましょうよ」というものでした。しかし衆議院議員と参議院議員の活動は、皆さんが思っている以上に異なっています。参議院議員より衆議院議員の方が、選挙区が小さく顔が見える選挙になるので、例えば家族の負担は2倍にも3倍にもなります。家族を含めた周囲との調整も必要なため、今すぐ決断することは難しかったのです。次に多かった声は、地方の病院の職員になって医師不足解消に力を尽くしてほしいというもの、医療系団体や医療法人のスタッフにならないかというものなど、でした。

 最終的に最も多かったのは「再び国を動かす立場へ戻ってほしい」というご意見でした。そして時間の経過とともに、私の中でも少しずつ、何らかの形で国政へ復帰しようという思いが湧き上がってきました。

 衆議院か参議院か、選挙区か比例区なのか全く分かりません。しかし、少なくとも次の参院選までには3年あります。衆院選も同時期にあるかもしれません。その時に備えて今後しばらく力を蓄えようと思いました。

全体最適をめざして

 特定の団体や医療法人に属すると、私は政治家なので、どうしても色眼鏡で見られる部分が出てきます。しかし、多くの人に会って意見交換したり、情報収集したりするには、私が医師として所属をしてきた大阪大学や日医総研は良い場所だと思います。医師として取り組んできた生活習慣病に対する施策を考え直すこともできますし、自分がこれまで政治家として見聞きした政策決定の仕組み、行政の動き方などの知識を活かすこともできるでしょう。

 そのような組織に所属することによって、医療提供側の立場になるのでないかと懸念される方もいることでしょう。しかし、私自身はあくまで国民の目線で考えます。時には医療団体側と意見を闘わせる場面も出てくると思います。

 例えば、多くの医療団体は70~74歳の方の窓口自己負担を1割から2割に引き上げることに反対しています。実はこの話、よく誤解されているのですが、現在1割負担の人はそのままです。2割へ引き上げられるわけではありません。現在3割負担の69歳以下の方が70歳になった時点で自己負担が2割になる、つまり下げ幅が現在(3割→1割)よりは小さくなる(3割→2割)という話なのです。確かに2割より1割の方が患者本人の負担は少ないです。しかし2割負担にすれば、1割負担に据え置くため使っている毎年の国の補正予算2000億円(皆さんが払っている税金です!)が浮きますから、これを例えば地域医療に関する他の大切な部分に当てる方が国民にとっての利益はより大きくなるのではないでしょうか。むしろそういう国との交渉を、国民を代表して医療団体が積極的に行うべきだと考えます。社会保障費がひっ迫している中では、全体のバランスを見る必要があるのでないかと思います。そういうバランス感覚を医療団体側へ提案していきたいと考えています。

 民主党を離れたのは、医療政策や社会保障政策に関する提言を社会に向かって発信する際に、特定の政党の看板を背負ったままでは難しいと判断したからです。民主党の幹部の方にも9月初旬に面会し、離党の旨をご了解いただきました。

制度を分かりやすく

 さて、制度にとって大切なのは、「国民にとって分かりやすいかどうか。ありがたいと思ってもらえるかどうか」です。医療制度や政策を国民に分かりやすいものにして、国民の理解を得ていくことが欠かせません。今の医療制度は、団体間の「縄張り」争いによる妥協の産物のようになっているものが多いので、複雑な上に、国民からの信頼を得られていないことも多いです。

 例えば、一定の研修を経た看護師が、一部の点滴や薬の量の調整など特定の医療行為を行えるようになるという「特定看護師」制度。国民からは非常に分かりにくいものになりそうです。同じ白衣を着ている看護師なのに、ある人にできることが別の人にはできないのでは分かりづらいです。不信感も生まれやすくなるでしょう。厚労省の担当者に訊いたら「名札の色を変えればいい」と言いましたが、そんな問題ではありません。国民の立場から言えば、別の国家資格にすべきです。そうするとシンプルな制度になって国民から見て分かりやすいと思います。

 こんな話もありました。2007年末に認知症の男性が電車にはねられた事故で、名古屋地裁は8月、見守りを怠ったことを理由として電車遅延の賠償金約720万円を支払うよう遺族に命じました。裁判ですから、これを政治家としてどうこうする話ではありませんが、しかしこの論理でいけば「24時間、家族が見守りできないのであれば、認知症の人は家に閉じ込めておくことが責任論としては正解」ということになります。しかし厚労省は、認知症の人も地域参加しながら暮らせる「地域包括ケア」をうたっていて正反対です。国民からしたら、一体どっちなんだと思うことでしょう。

 こうした矛盾を解消していくのが政治家の仕事だと思います。

 まずは皆さんの話を聴かせてください。全国どこでも参ります。それぞれの現場で一体何が起こっているのか、国民や医療者は何を考えているのか真摯に見聞きしたいと思っています。それを、国政に復帰した時の政策に活かします。

 私に意見したい、話を聴いてほしいという方がいらしたら、ぜひご連絡ください。電話は、072(747)9318、FAXなら072(747)3194、メールはinfo@s-umemura.jp まで。よろしくお願いします。

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