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認知症を知る17 認知症にやさしい社会は誰もが暮らしやすい

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◆ハート・リング運動 早田事務局長に訊く

 7月末に発足シンポジウムを開いた認知症啓発NPO「ハート・リング運動」。実は私も理事の1人です。どのような経緯で発足し、これからどのようなことをめざしていくのか、早田雅美事務局長に聴きました。(ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵)

認知症インタビュー風景2.jpg 本職は電通のコミュニケーションプランナーである早田さんは、認知症の母・美智子さん(81歳)の在宅介護と、4歳になる息子さんの子育てを、共働きの奥さんと一緒にこなしています。美智子さんは、アルツハイマー型とレビー小体型の混合した認知症で要介護度5。要介護状態になってから約4年です。

――どのような活動を行っていくNPOでしょうか?

 認知症になっても安心して暮らせる社会をめざして、様々な人や企業が、心と頭(ハート)で参加し、暮らしやすい街をつくっていく活動です。
 認知症の患者や家族、関係者の声を集めて企業に提供し、必要なサービスや活動の開発をサポートするようなことも考えています。例えば私が母と一緒に街中を歩くと、「こんなサービスがあるといいのに」と思うことがたくさんあります。飲食店の食事メニューや公共空間の表示や色はもちろん、サービス、生活用品や介護用品など、たくさんのニーズがあります。

――認知症患者にやさしい社会にすることが、経済の活性化にもつながると。

 4人に1人は高齢者の社会なので、どの企業も高齢者を大切なお客様だと認識しています。でも高齢者の中には、認知症の人も健康状態の良くない人も多くいます。元気な高齢者だけをターゲットにするのは企業としても勿体ないです。色々な状況に置かれている高齢者に対応できるサービスをつくっていったら、もっと過ごしやすい街や社会になると思います。
 また、認知症を抱えながらも様々な活動をして、自分らしく生き生きと暮らしている人たちがいます。そういう方々の存在を知らせていくことで、認知症のイメージを変え、認知症になったことで今ある力のすべてが失われるわけではない、ということを知ってもらいたいです。認知症の人にもできることがたくさんあると知ってもらわないと、例えば温泉旅館に予約しようとしても断られたり、イベントで制限を受けたり、勿体ないと思います。

――共働きをしながら介護と子育て、それだけでも大変だと思うのですが、活動を起こそうと思った理由は何でしょうか。

 10年ちょっと前にアルツハイマー型認知症だった父(昭三さん、享年73歳)を介護した時、劣化していく父を認めたくない、見ていたくないという絶望や不安ばかりでした。徘徊するといけないから薬を飲ませておこうとか、鍵をかけておこうとか、階段から落ちるといけないから通れないようにしようとか、転ばぬ先の杖を何本も立ててしまって、父の気持ちに寄り添うことができず、亡くなってから大変に悔やみました。
 今回幸か不幸か2回目の介護で、逆に母に充実した1日を過ごしてもらおうと、母のできることに目を向けて、社交ダンスを習わせたり、犬を飼ったり、旅行に連れ出すようにしてみたら、大変は大変なんですが、自分自身の負担の重さも本人の笑顔も随分と違うことに気づきました。会社員をしながら2度も認知症介護の体験をして、その光と陰を皆さんに知らせたい、少しでも役に立ったら嬉しいという気持ちがあります。
 母の主治医でもある小阪憲司先生(横浜市立大学名誉教授)に「もうちょっと世の中がこうなったら......」という話をしたら、先生も全く同じことを考えていると言われ、だったらやってみようかと考えました。

――仕事との両立に困ったりすることはないんでしょうか。

 何も困らないと言ったらウソになります。ただ、捉え方をちょっと変えて、介護を抱えた社員の生活と給料とスキルを守ってゆくことは、これからの企業にとってリスクではなく、CSR的な新たな企業価値であるという思想を根付かせていくことができたなら、私がここで悩むことも無駄ではないのかなと考えています。

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