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加工食品は老化を早める?~リン酸探検隊①

文・堀米香奈子 本誌専任編集委員。米ミシガン大学大学院環境学修士
 今回は、前号までの「血管を守る」特集1~4で取り上げた、リン酸過剰摂取の影響をおさらいします。

 私たちの体では常に、内部の状態が一定の範囲に保たれるよう、無意識の調節機能が働いています。恒常性(ホメオスタシス)と言います。言ってみれば、生きることは恒常性を維持する活動の連続で、自力では十分に維持できなくなるのが生活習慣病や廊下です。

最初に腎臓が傷む

 さて、リンは、細胞膜や遺伝子の構成要素であり、エネルギー代謝など様々な生命活動に必須です。その血中濃度は、当然のことながら一定の範囲内に保たれています。その調節は、腎臓が尿から排泄するリンの量を変えることで行われ、しかし処理能力を上回るリンが血中に存在すると、細胞を殺す作用のあるリン酸カルシウム結晶が尿に析出し、腎臓を傷めます。

 これによって処理能力が低下、リン酸カルシウム結晶が析出しやすくなって、さらに腎臓が傷むという悪循環です。腎臓が傷むと、血中に老廃物が溜まったり、ミネラルバランスがおかしくなって意識混濁や不整脈、心不全を起こしたりします。高血圧や貧血になりやすくなったり、骨がもろくなったり、不要なホルモンの分解・排泄ができなくなったりと、腎機能低下はまさに万病の元です。

 さらに、腎臓が傷んでリン濃度を素早く下げられなくなると、血中に「CPP」と呼ばれるリン酸カルシウムとタンパク質の結合物が増え始めます。

 CPPが血中にあり過ぎると、次第に血管の壁にこびりつき、血管の細胞の性質を変えて「石灰化」してしまいます。CPPは加えて体のあちこちで病原体のように作用し、細胞死や免疫反応(炎症)などを招いて全身老化を加速させると考えられています。

知らずに過剰摂取か

 さて、血中に過剰なリンが存在しやすいのは、腎機能が低下した人、骨からリン酸カルシウムが溶け出す骨粗鬆症の人などです。これらの人に加えて、加工食品や外食を毎日大量に消費する人たちも同様でないかと懸念されます。

 というのも、食材に元々含まるリンは消化・吸収が緩やかで、血中濃度をそれほど上げない一方、添加物である「リン酸」「リン酸塩」由来のリンは、腸管で吸収されやすく血中濃度上昇に直結するからです。

 困ったことに、日本人の暮らしにすっかり浸透している加工食品や外食には、現行法規上は表示する必要のない形で「リン酸」「リン酸塩」が非常に多く使われています。知らないうちに過剰摂取している可能性も高いのです。

 私たちに今できるのは「疑わしきは避ける」ことくらいで、もう少し情報を知りたいですよね。そこで次回から、加工食品への使用状況を独自に地道に調査していきます。

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