骨粗鬆症が招くCPPと石灰化~【年間特集】血管を守る④
リン過剰による血管石灰化や老化は、骨粗鬆症だと一層深刻になります。カルシウムの摂り過ぎも要注意です。
カルシウムの貯蔵庫である骨は、絶えず新陳代謝を繰り返しています(リモデリング、2015年5月号参照)。破骨細胞が古くなった骨を溶かし(骨吸収)、溶けた部分に骨芽細胞が新しい骨を作ります(骨形成)。
この二つの働きの協調は、神経や筋肉の正常な働きに欠かせないカルシウムの血中濃度を一定に保つことにも貢献しています。そして、この二つの働きのバランスが崩れ、骨吸収の量が骨形成の量を継続的に上回るようになってしまうのが、骨粗鬆症です。
骨粗鬆症は骨が弱くなる病気として一般に理解されていますが、血液の成分から見ると全く別の姿を現します。つまり、リン酸カルシウムとして骨に蓄えられていたものが、リン酸イオン、カルシウムイオンとして血中に大量に出てくるということです。
これは、リン酸(無機リン)を過剰摂取した時とほぼ同じことです。このシリーズで紹介してきた、腎臓が傷むとかCPP(リン酸カルシウムと血清タンパクの微小結晶)が形成されて病原体のように作用するといった悪影響も同じと考えられます。食事などからのリン過剰摂取が重なれば、悪影響は相乗的になります。
その患者数は、国内で1200万人を超えるとも推計されています。
作るより壊す
骨吸収と骨形成のバランスは、高齢期と女性の閉経前後に崩れやすくなります。このうち、リン酸過剰摂取と重なった場合の血管への影響がより大きいと考えられるのは、高齢期のバランス崩れの方です。
加齢に伴って骨吸収と骨形成の働きは共に下降しますが、骨吸収の低下より骨形成の低下が大きいことによって骨粗鬆症となります。
「この場合、骨へリンとカルシウムを運ぶCPPが形成されても、骨の材料としてほとんど使われずに余ってしまいます。行き場を失って漂ううちに、血管内壁の受容体や白血球に捕まって、血管石灰化や炎症をひき起こすと見られます」と自治医科大学抗加齢医学研究部の黒尾誠教授は話します。
一方、閉経後女性に見られる骨粗鬆症は、骨吸収が加速して骨形成が追いつかないため起こります。いわゆる女性ホルモンのエストロゲンに骨吸収を抑える働きがあり、閉経前後からその分泌が激減するため、結果的に骨の破壊ばかり進んで骨量が減少してしまうのです。
血中のリン濃度、カルシウム濃度が過剰になって腎臓に負担をかけるのは同じですが、たとえCPPが出来たとしても、ある程度は骨で使ってくれるので、加齢に伴う骨粗鬆症に比べれば血管などへの悪影響は少ないと考えられます。ただ、リン酸の過剰摂取をしない方がよいのは、言うまでもありません。