清涼飲料水~リン酸探検隊③
体内で出来るリン酸カルシウム結晶(CPP)が血管石灰化をひき起こすことを明らかにした自治医科大学抗加齢医学研究部の黒尾誠教授によれば、健康な人でも若いうちで1日2g以上、50歳意向だと1日1g以上のリンを尿から排泄すれば腎臓が傷むかもしれないとのことです。腎機能の悪い人は、もっと少量しか安全に排泄できません。
文・堀米香奈子 本誌専任編集委員。米ミシガン大学大学院環境学修士
日本人は食材から毎日平均1g程度のリンを摂取しています。うち尿から排泄されるのは半分ほどですが、腎臓の安全を考えると、吸収率が高く尿からの排泄に回ってしまう食品添加物由来のリンは、多くとも1日500㎎未満の摂取に抑えたいところです。
背景に低糖ブーム
さて、リン酸の使用目的と使用量をメーカーに問い合わせてみようというプロジェクト、今回は清涼飲料水です。
「炭酸飲料を飲むと骨が溶ける」という噂の元になっていた物質が、まさにリン酸です。腸内でカルシウムと結びつき、その吸収を阻害してしまうのです。骨が作られにくくなり、むしろ溶け出す方向へとバランスを傾けます。
リン酸が使われる理由は、大手飲料メーカーの元社員によると「糖類を高濃度で含む液体は保存性が高いのですが、糖を減らすと雑菌が繁殖しやすくなるので、製品の酸性を強くする必要があり、安価なリン酸が『酸味料』という名目で使われます」とのこと。
ダイエット飲料ブームが一役買っているということになりますね。なお、炭酸でも酸性になるのですが、「ペットボトルから徐々に炭酸が抜けて約2カ月で酸性度が充分でなくなります」(同)。賞味期限が2カ月しかない商品は小売店から敬遠されるので、入れざるを得ないようです。
酸味料として使用
まず、業界1位でペプシコーラなどのサントリー食品インターナショナルは、「製品製造のノウハウに関わりますので」とゼロ回答。業界3位で、三ツ矢サイダーなどのアサヒグループHDも、「酸味料として使用している例があります」としながらも、製品ごとの使用例については「処方に関わる技術情報であるため」社外秘とのことでした。
ただしこの2社は、ホームページで各製品のリン含有量を公開しているので、よく飲む商品の含有量を一度確認しておいてはいかがでしょう。100mlあたり10mg未満の商品が大多数ですが、例えば『なっちゃん オレンジ』などは100mlあたり40㎎と、かなり多いです。
ちなみに、元祖コーラの日本コカ・コーラ(業界2位)は、「味覚向上・改善のために酸味をつける『酸味料』として(中略)使い分けております」と認めたものの、含有量は「競争上の理由」から回答はなく、ウェブでも公開されていません。自衛のためには困りますね。