味噌汁は高血圧に悪いの? ~健康情報しらべ隊②
味噌汁で降圧?
さて、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、欧米の大規模臨床試験を根拠に、「高血圧の予防、治療のためには6g/日未満の食塩摂取量が望ましい」としています。その一方、日本人の食塩摂取量は、平均で1日9.7gと、基準を大きく上回っています。
今からさらに塩を半分近く減らさなければならないのだとしたら、大変な道のりに見えます。
摂取源は、上位から醤油、食塩、そして味噌です。この中で、味噌(味噌汁)は特に減塩のターゲットにされやすく、この数十年、食生活の欧米化とも相まって、味噌の消費量は大きく減少してきました。それでも今なお、日本人の塩分摂取源の約12%は味噌汁です。
いっそ毎日の味噌汁をやめてしまおう、と短気を起こす人がいるかもしれませんが、早まらないでください。味噌汁は逆に高血圧予防に役立っているかもしれない、という研究報告が相次いでいるのです。
岩手県で、住民998人(平均63.6歳)のデータを解析したところ、味噌汁を摂る頻度が高いほど、家庭高血圧※の割合は少なかったことが報告されています。血圧降下作用のあるカリウムや、動脈硬化を防ぐイソフラボンなどが、味噌に含まれるためと考察されました。
別の研究では、味噌汁を多く摂っている男性は、食塩摂取量は多いけれども、血圧への悪影響が見られませんでした。原因として考察されたのが、魚や野菜も多く摂っていたことでした。魚には動脈硬化を予防するオメガ3不飽和脂肪酸が、野菜にはカリウムが、それぞれ豊富に含まれます。
要するに味噌には、血圧や血管を健康に保つための栄養成分も豊富に含まれており、また、味噌汁を含む献立や食生活は栄養バランスが取れていることが多く、血圧コントロールに適している、ということなのです。
ということで、味噌汁を高血圧の戦犯扱いして食生活から排除するのは、愚かなことですね。たとえ食塩感受性の人でも、減塩のターゲットは他の食材に絞るべきですし、食塩非感受性の人にとって、味噌汁は良いことづくめです。野菜中心の具沢山味噌汁を取り入れた献立、ぜひやってみてください。
ディオバン事件その悪質さ