体重が減らないのは腸内細菌の仕業かも~大人も知りたい保健理科 新㉘
吉田のりまき 薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰
「どうすれば体重を減らすことができるのですか?」と訊かれることがあります。そういう方の多くは、コレステロールや血圧、血糖といった値が少々高い状態にあり、食事や運動で体重を減らすように医師から言われています。しかし、「運動をしたけど、そんなに体重は落ちない」、「メディアで紹介されている食事法を試したけど、減った人がいるのに、自分の場合は全然減らない」ので、質問という形で、愚痴を言いたいようです。
四六時中、体重のことばかり頭の片隅にあるというのは、かえって不健康ですが、やはりきちんと減らして適正体重を維持することは重要です。それがうまくいかないと、医師からの積極的な指導は次第になくなり、薬で数値が落ち着いているのだから様子を見ておこうという状況になっていきます。
現状に甘んじたくないという気持ちはある一方、新たな方法で再チャレンジするのは段々億劫になってきて、焦りが強まるばかりという方も多いことでしょう。
そこで、今回は、ちょっと視点を変え、新たに取り組む一歩になっていただけそうなお話をしたいと思います。
エネルギーの収支
どうすれば体重を減らすことができるでしょう。まずは当たり前の話をしておきます。食べた総カロリー(イン)と、消費する総カロリー(アウト)を比べて、インよりアウトが大きければ、必ず痩せていきます。
消費エネルギーは、基礎代謝と活動代謝に大きく分かれます。基礎代謝は、安静時の代謝量で、身長、体重、年齢、性別によって決まってきます。加齢と共に基礎代謝が減ってきているのに、若い時と同じ食生活をしていては、エネルギーが余剰になります。一方、活動代謝は、運動量と関係します。自分で増やすことは簡単です。1日何歩何時間歩く、というように自分なりの目標を立てて、取り組んでいる人も多いことでしょう。
インの方は食事の量で調整できます。しかし、脂肪や炭水化物を必要以上に制限し、ともすればタンパク質まで減らして筋肉量を低下させている人がいます。その一方で、機能性成分に高い関心を持ち、多種多様な成分を次々とサプリの形で摂取していたりします。今一度学校で学習したことを思い出してほしいものです。なぜ「三大」栄養素と言われているのかを。基本の三大栄養素を蔑(ないがし)ろにして機能性成分だけ補っても健康は維持できません。