新型インフル 「ハイリスク群の命に集中を」 尾身・専門家委員長
次に、これからどうなるのかの予測を述べたい。全部で5つ。
まず、世界的に感染が広がっている。米国は予想以上に重症例が増えている。オーストラリアでも日本以上に感染が広がっている。WHOも内部でいつフェイズ5から6に上げるのか議論している。もちろん単純に6に上げるだけでなく、その危険度も同時に細かく説明することになると思うが、上げるとしたら10日以内に引き上げが行われてもおかしくない。
次。そのような状況にある以上、今後も外からウイルスが入り続けることを覚悟しなければならない。
3点目。闘いは長期戦になることを覚悟しなければならない。
4点目。地域でコミュニティで、報告されている以上に感染の広がっている可能性も否定できない。
最後に5点目。これからの国、地方自治体の対策として、感染を封じ込めるのは、もはや現実的でない。
現状をどう見るかがこれからの対策を考えるうえで大事だ。エピカーブを見ると5月16日をピークに下がってきて、ここ2週間ほどは1日数例という日が続いている。また、その数例のほとんどが海外渡航の後だったり国内でも感染地域に行ったことがあったりしている。だったら終息に向かっているのでないかという意見もあるところだが、必ずしも終息とは結論できない。なぜならば、今のサーベイランスは海外に行ったり感染地域へ行った人を優先的に拾いあげている可能性があるからだ。感染が限局しているとは言えない。今のサーベイランスのシステムがバイアスというけれど、偏りを持っている可能性がある。むしろじわじわと感染が継続している可能性を否定できない。
こう言うと、持続的感染があるならば大流行がないのはおかしいという人もいるだろうが、しかし流行が表面化してくるにはタイムラグがある。月単位で見ないと分からない。今のところ大多数の症例が疫学的リンクの中にある。しかし数例ではあるが、いったいどこで感染したのか分からないという疫学的リンクの切れているものもある。これが地域で持続的感染があることを疑わせる根拠であり、一層のサーベイランス強化が必要である。