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ニュース〜医療の今がわかる

長男の死から15年 メディエーターめざし看護学校入学 協会研修会で講演


 和田仁孝・協会専務理事(早稲田大学教授)
「SIDSの会の相談をやってて、今改めて医療メディエーターになろうと思った理由というか、NPOの相談とは何が違うのか」

 寺尾
「SIDSの会にご相談に来られる家族遺族は、病院側との対話がうまくいかなかった人。裁判を抱えているような人もいるし、心療内科にかかっているような人もいる。そのように医療的に専門家にかかっていても、なお満たされない。それで私たち素人が一体何をできるかというと、ただ一つだけ同じ経験をしている、そこで共感できる。言われたらイヤなこと、何気ない慰めの言葉でも辛くなることはあるので、駆け込み寺、最後の砦のような所。
(略)
 遺族のケアはできるんだけれど、これだけして何か変わるのか疑問に感じるようになった。また最近は遺族の方もインターネットで非常に情報を入れてきているので、生半可な知識で話をしていると騙しているような感じになってしまう。プロにはなれないけれど、もう少し極めたいなと思った。それが看護学校へ行き始めた理由かもしれない。どうして医療関係者じゃないとダメなのかとは思うけれど、今のままだと遺族のこと子供のことは分かるんだけどそれ以上は分からない。

 遺族と医療者とは川のこちら岸と向こう岸のようなもので、遺族ケアだけしていたのでは結局何も変わらない。橋渡しをしないと。それで向こう岸にも行ってみようかなと考えた」

 和田
「ご遺族で協会にご協力くださっている方は何人かいらっしゃるが自分で看護学校へ行くというのは凄い。一つ今の発言について説明すると、なぜ医療職でないとダメなのかは弁護士との関係。事故に第三者が病院の中で関わるのは職員でない場合には難しい。ただ、メディエーターの仕事は事故の時の対応だけではなくて日常から対話の橋渡しをすることなので、それに関しては職員でなくても構わないのでないかと考えて、そういう市民向けの講座も開き始めている。今日はもうお一方、メディエーターになるために医療職をめざしているという方が来ているのでご紹介する。鍵本さんはMSWをめざしている」

 鍵本(お子さんが15歳とのこと)
「昨年父を亡くして病院の対応に色々な疑問を持った。寺尾さんが見たのよりは1年くらい遅いと思うが、私もちょうどNHKでメディエーターのことを紹介していたので、すぐにセミナーを申し込んだ。そうしたら医療者しか受けられないと言われて、でも市民向けのもできたからということで3月に受けた。どの病院でも、何か言いたいことがあった時に、どこに聞いてもらったらいいか分からない。どの病院にもこういう職の人がいて窓口が分かりやすかったらどんなにいいだろうと思って、自分がなるには病院側の人になるしかないんだということで4月にMSWの通信制講座に入った。来年7月に試験があるので、頭の中が大混乱になっているところ。

 今は病院の知り合いもメディエーションのことを知らない。どの病院にも患者の気持ちを聞いてもらう窓口として、そういう気持ちやスキルを持った人がいたらいいなということで、病院には置いてもらいたいと思うし、市民にも存在を知ってもらいたいなと思う」

 和田
「鍵本さんの本職はグラフィックデザイナー。医療は、市民と医療者と両方からアプローチして作っていくものだろう。メディエーションは何かあった時に声をかける、その背景には配慮や思いがある、その人としての思いややさしさが本質だと思う。その本質は医療者だけが持っているものではないので市民の中からそういう役割を果たす人が出てきても構わないはずだし、SIDSの会の活動も本質は変わらないと思う。いずれにせよ、ご遺族の経験を持っている方々が医療職として入ってこられるというのは非常に意義深いことだと思う」

(以下略)
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