第一回ADR機関連絡調整会議開催
医療に関して裁判外の紛争解決(ADR)機関を運営している関係者を一堂に集めた厚生労働省主催の連絡調整会議が26日開催された。動きの止まっている医療事故調構想との関係にも注目が集まるが、事務局の趣旨説明は「通常の検討会とは異なり、ここで何かを決めるということより、参加者で認識を共有して自発的に何か始めていただけるならありがたい」と控えめだった。(川口恭)
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冒頭に阿曽沼慎司・医政局長が挨拶
「医療事故に関する民事訴訟の数は平成16年をピークにここ数年は少し減少しているが、民事訴訟については、解決に時間がかかる、費用が高い、経過・結果が公開されるなど、患者・医療側双方にとって大きな制約があると言われている。こういう背景の中で裁判とは違う紛争解決手段としてADRの活用が注目されている。医療ADRについては、主として各地の弁護士会を中心運営されており、また茨城県では医師会を中心としたものが運営されていると承知している。昨年12月には千葉県で特定NPOの認証を受けた。このような医療ADRの設立が今後ますます増えて行くものと思われる。厚生労働省としても、患者側、医療側双方が利用しやすい環境を整えなければならないと考えている。活発な議論、情報共有をお願いしたい」
座長に山本・一橋大学教授を事務局が指名。山本氏が挨拶
「とりわけ医療分野においては裁判外の解決が重要な意味を持つと認識している。ただし、ただ法律を作ったり制度を作ったりすれば済むというものではなく、実際に運用する設備(?)であるとか運用される人が非常に重要という風に思う。ここにお集まりの実際にADRを行われている方々、あるいは関係におられる方々が積極的に意見を交換し情報を共有し、問題点を認識し、解決のために取り組んでいくことは極めて意義深い」
この後、東京3弁護士会、愛知県弁護士会、千葉の医療紛争研究会の代表が、それぞれの取り組みについて説明した。それぞれ微妙にやり方が異なっている。
東京は西内弁護士が、仲裁人3人(手続き主宰者、医療側、患者側)で実施していることを説明。補足説明で鈴木弁護士が「3件のうち2件が応諾、うち6割が和解。いかに応諾率を高めるか、いかに和解率を高めるかが課題」と述べ、また児玉弁護士が「手続きは決まったものがあるわけでなく様々な試みがなされている。その実際まで説明できればよいのだが、秘密保持との兼ね合いもあって、外側の枠組みしか説明できず隔靴掻痒」と述べた。
愛知は、増田代表が「たいてい双方に代理人がついているので仲裁人も1人」と迅速ミニ裁判方式に徹してそれなりに成果を挙げていることを報告した。
千葉は、植木会長が、調停の前に医療相談を設けることで相談の8割以上が調停申し立ての前に解決していることを説明、「①今のところ産科分野の調停申し立てがない。おそらく無過失補償に行っていると思われる②事前には医師や保険会社から紛争が増える、賠償金が増えると心配されたが必ずしもそんなことになっていない。むしろ医療訴訟は減っている。患者側が裁判を本質的に好んでいるということはなく、裁判に代わって迅速・公正で専門的判断のできる第三者機関があれば総体的に紛争事例は減って行くのでないか。ただ全てADRで解決できるとも思えないので今後は裁判との棲み分けが必要になっていくだろう」と説明した。