患者-医療者のコミュニケーション勉強会 東大医科研病院
医療者と患者が一堂に会して互いのコミュニケーションについて学ぶ勉強会が17日、東京大学医科学研究所病院で開かれた。企画した外科の釣田義一郎講師は、「この病院は臨床試験をするのが使命。しかし、ともすれば『人体実験』と誤解を招くことにもなりかねないので、患者と医療者との信頼関係を構築するための試みとして開いた」という。(川口恭)
この日の講師は、医療メディエーター養成の第一人者である和田仁孝・早稲田大学法科大学院教授。聴衆は40人あまり。亀田信介・亀田総合病院院長も聴きにきていた。
和田教授が、「これだけは覚えて帰って」と言った部分をご紹介する。
「患者側が『先生があんなことを言った』という文句や『こうしてほしい』という言い分を色々と言う。医療者側は『そんなこと言ってない』『そんなことできない』と答えて衝突する。これが図のプリン型の真ん中のところ。メディエーションでは本当にここが一番の問題なのかということを考える。その背景にある一番深く根っこにある思い、それを探る。そこならお互いの要求を満たすことができるかもしれない。言い争っている問題を解決しようとするのでなく、ぶつかっている問題は放ったらかして、本当は何をしてほしいのか、してあげたいのか、お互いの中から引き出していく。
例を挙げると、患者さんが『あの無愛想な看護師をクビにしろ』と怒り出して、医師が『そんなことできない』という場合。ここの部分だけではお互いに納得できる解決策などない。しかし、患者に話をよくよく聴いてみれば、以前は検査も多く薬も変わったのに、最近は医師がロクに話も聴かず同じ薬ばかり出す。見捨てられたんじゃないかと不安だったというのが根っこ。その不安が看護師の態度をきっかけに爆発しただけだった。そういう話になれば、医師の側でも『いや、しばらく様子を見ようと思っていただけですよ』と話をしてお互いに安心できる。そういうことが現実にあって、根っこの思いにたどり着ければ解決不能に思えたコンフリクトも解決可能になることがある」