今さら訊けない 食事とサプリの基礎知識
何をどう食べると体に良い――。こんな話をテレビや雑誌で目にしない日はありません。医食同源という言葉があるくらいですから、全くのウソではなさそうです。
でも、その根拠をきちんと理解していますか? 食事とサプリメントの基礎知識を押さえてみましょう。
監修/山田和彦 国立健康・栄養研究所 食品表示分析・規格研究部長
伊藤壱裕 銀座オクトクリニック院長
人間、外から栄養を取らないと死んでしまいます。
だから、食べるのを忘れて死なないよう、人間は栄養不足には不快感を、食べた時には快感を感じるような仕組みになっています。
つまり、食べることは①生きるために不可欠であり②生きる喜びでもあるわけです。
飢えに苦しむ時代は、①②共に満たされぬ欲望でした。その場合の「体に良い」は、「栄養に富む」とほぼ同義。「栄養に富む」ものは、たいていの人がおいしく感じるようになっています。だから①と②が矛盾しませんでした。言葉を換えると、本能が生命を守ってくれたことになります。
ところが現代は、好きなものを好きなだけ食べられます。「おいしく栄養に富む」ものばかり食べてしまいがちです。その結果として生活習慣病になったりするわけで、本能に生命が脅かされる時代になったわけです。
となれば、理性で本能を制御する必要があります。バランスの良い食事をしましょう、と耳にタコができるほど聞かされていることでしょう。バランスを考えるのは理性の仕事ですね。
ただし、どういうバランスが望ましいのか、実は簡単な話ではありません。なぜなら、人間にとってベストな栄養素量がどの程度なのか、本当のところ誰も知らないからです。
人間の体は非常に複雑で、ある物質が時と場合によって違う役割を果たします。物質どうしの組み合わせによっても違いが出ます。また、少々の過剰や不足なら帳尻を合わせてくれるようにもできています。基準とされている食事摂取基準にしても、過去からの平均的な経験やヒトでの試験から確率論を用いて「こんなものだろう」と決められたものなのです。
つまり、栄養素の絶対的な量だけを考えても無意味で、体の不調に因果関係のありそうな栄養素の不足・過剰があったら、その不足・過剰を解消してやるという方法しかないのです。
因果関係を判断するには、それぞれの物質が体内で何をしてくれているのか理解する必要があります。まずは食物全体の大きな3つの役割を理解するところから始めましょう。①エネルギー源となり、②体の材料となり、③体の調節をする部品となる、です。