これがホントの ナースのお仕事!
さて、このナース、人気が高い一方で辞める人の多い職業でもあります。特に学校を卒業して病院に就職してから1年もたたずに辞める人が多く、04年には1年以内の離職率は9.3%に達しました。
この原因は単純ではありませんが、医療が年々高度化していること、仕事が増えていること、結果として医療事故を起こしかねないと恐れることが大きく影響していると見られています。
「高度化した」「増えた」「医療事故を起こしかねない」は、たまたま新人離職で注目されていますが、新人に限らない普遍的な課題です。その中身が分かってくると、ナースたちが、なぜあんなに忙しそうなのかも分かってきます。
「高度化」は、医療が日進月歩で進んでおり、進歩した部分をすべて医師が引き受けたら大変なことですから、ある程度は避けられません。
しかし「増えた」の方は、医療政策と密接に絡んでおり、受益者・負担者である私たち国民の考え方次第で減らすことも可能なものです。
急性期病院では、在院日数の長い患者は診療報酬が下がること、できるだけベッドの回転数を上げた方が経営にプラスになることから、入院期間をどんどん短くしています。入院期間中に患者がこなす決まり事は以前とあまり変わりませんから、必然的に入院患者の1日のスケジュールがタイトになっていき、ナースの仕事も増えます。
また、前頁でも説明したように、ナースは1人で複数の患者を受け持ちます。複数の患者が同時にケアを必要とするようなこともあります。
その受け持ち患者数が日本は諸外国の2~3倍に達しています(左図)。ナースを増やせばよいじゃないかと思うでしょうが、入院患者さん何人にナースが1人いるかを示す「看護職員配置基準」という数値があり、診療報酬に認められた最高ランクを超えてナースを雇うと、病院は人件費分が持ち出しになる仕組みです。簡単にはいきません。
患者1人あたりの仕事量が増え、しかし受け持ち患者数が減らないとしたら、何が起きるかは明白です。
ナースが限界以上に頑張るか、手が回りきらなくて注意散漫になるか。前者の行き着く先が、バーンアウト(燃え尽き)による離職であり、後者の行き着く先は医療事故です。
この受け持ち患者数については、少し減らす方向で4月に診療報酬の改訂が行われました。3月までは「(入院患者)2対1(看護職員)」が最高ランクでしたが、4月から「1.4対1」に相当するランクが新設されました。
併せて今回の改訂では、これまでの総配置表示では実際にその時間に勤務している数とギャップがあるとの指摘に応え、実質配置に対応した数で表すことになりました。この表記では、3月までの最高ランクは「10対1」であり、4月からの最高ランクは「7対1」になります。最高であっても受け持ちが7人いるというのは、結構驚きではありませんか。