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甘く見ないで胃腸のトラブル。

消化器はこの順に並んでいます。環境も様々です。
11-1.1.JPG 先ほど消化管は一本の筒だと書きましたが、最初から最後まで同じ太さというわけではありません。内側の環境は、場所によって千差万別です。
 当然ながら、場所ごとに働きも全く異なり、口に近い方から、食道→胃→十二指腸→空腸→回腸→盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸という名前が付いています。このうち、十二指腸から回腸までの6メートル強を小腸、それ以降の1.5メートルほどを大腸と総称します。
 では、トラブルについて見る前に、それぞれの部位の働きをおさえましょう。
 まずは食道から。気道の後ろ側を通っています。口が噛み砕いて唾液と混ぜ合わせ飲み込んだものを、口の側から順番に広がったり縮んだりして胃へ送り込みます。こういった広がったり縮んだりしながら先に進める運動を蠕動と言います。逆立ちしてもモノが食べられるのは食道のお陰です。
 続いて胃です。みぞおちの辺りにあります。ここでは食物をいったん溜め込み、強力な酸やたんぱく質分解酵素を含む胃液と混ぜてすり合わせます。食物を殺菌、主にたんぱく質を消化し、ドロドロの粥状になったら、腸へ少しずつ送り込みます。
 胃の中は強い酸性なので、生きていられる生物はいないと考えられてきましたが、近年、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という細菌をすまわせている人の多いことが分かってきました。そして、このピロリ菌が様々な悪さをするらしいのです。後ほど改めて説明します。
 十二指腸は、強い酸性で送り込まれてきた胃の内容物に自ら分泌する重炭酸イオンに加え、胆汁と膵液を混ぜ合わせ、中和すると同時に消化を進めます。
 空腸・回腸では、消化酵素の作用により、内容物をアミノ酸、ブドウ糖、中性脂肪、脂肪酸などへと最終分解すると共に、粘膜の先端にある絨毛と呼ばれるひだから、それらの栄養素を吸収します。小腸の中径は奥へ行けば行くほど細くなり、回腸の最後部は直径3センチほどになります。ここまでで食物中の栄養素の9割が吸収されます。
 最後の大腸は、残りカスを運んで溜めると共に水分やミネラルを吸収します。大腸の動きが良くて通り抜けるスピードが速すぎると下痢便になり、動きが悪くて停滞すると便秘になります。
 大腸を語るうえで忘れてならないのが、中にすみ着いている腸内細菌です。糞便の実に3分の1が腸内細菌だと言われており、腸の働きに影響を与えるだけでなく、近年は大腸の炎症や発がんとの関係でも注目されています。

善玉菌と悪玉菌  大腸粘膜には100兆個とも言われる細菌が住み着いています。彼らが栄養分としているのは人が小腸までで吸収しきれなかった食品成分で、彼らが出すものを人が再利用することもあります。  糖を栄養分に酸を作るような乳酸菌類は、腸の働きを良くするなど健康に良いと考えられているので「善玉菌」、たんぱく類や脂肪分を栄養分に毒素を作るような腐敗菌などは体に悪影響を与えるとして「悪玉菌」と呼ばれることがあります。どちらとも言えないのが「日和見菌」で、人の体力が落ちると突然暴れたりします。  腸内にすみ着ける菌の総量は大体決まっていますので、善玉菌が増えれば悪玉菌は減ることになります。善玉菌を増やすコツは、規則正しい生活とバランス良い食事です。抗生物質を飲むとお腹の調子がくるうのは、腸内細菌が大量に死んでバランスが崩れるためです。

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