更年期障害 切り抜けよう。
なぜ壮年期から老年期に移行する時期に様々なトラブルが出てくるのか。今回は単刀直入に、この説明から始めることにしましょう。
性ホルモンの分泌が減って体のバランスが崩れると共に、その乱れをカバーする脳の機能も衰え始めており、自律神経がバランスを崩してしまうから、というのが一般的な説明です。
何のことだか今ひとつ分かりませんね。性ホルモンとは何か、それがどうして減るのか、なぜ自律神経までバランスを崩すのか、頭の中が疑問だらけになったのではないでしょうか。順に説明します。
性ホルモンとは、読んで字のごとく、体や心を男性らしく、あるいは女性らしく形成させる(性差を生じさせる)働きを持ったホルモンのことです。ご想像の通り、男性ホルモンと女性ホルモンとに分けられます。ただし、男性の体内に女性ホルモンも存在しますし、その逆もまた真です(コラム参照)。
最近、更年期障害は男性にも起きるという考え方が一般的になってきましたが、性ホルモンの減少が急激に起きるのは女性の方です。このとき月経不順や閉経も同時に起きるので、更年期に性ホルモンの減る理由が見えやすくなります。
つまり性差を生じさせる性ホルモンが存在する究極の理由は、子どもを産むのに都合良い心身状態をつくるためと考えられ、子どもを産める年代を過ぎると、性ホルモンも「お役御免」になるということです。と同時に脳の機能も衰えてきます。寂しいことではありますが、資源に限りある中で生物が連綿と命をつないでくるには、生殖年齢を限った方が合理的だったのかもしれません。
性ホルモンは様々な場面で体組織の維持にも働いている(表参照)ので、性ホルモン不足が体調不良となって表れます。
さらに影響は、身体面だけにとどまりません。
この性ホルモンの分泌を制御しているのは、脳の視床下部という器官です。視床下部は同時に、脈拍や血圧といった基本的な体の働きを制御している自律神経も司っています。喜怒哀楽の感情を制御する働きもあります。
要するに、あらゆる心身現象の司令塔が脳の視床下部に集まっており、内分泌系の乱れを自律神経系や情操系でカバーしようとするのですが、ストレスによって脳の働きが抑制されたり脳そのものが衰えたりすると、調整がうまくいかず、自律神経失調や心身症に至るというわけです。
これが更年期障害です。男性の場合も、性ホルモンの減少が徐々に起きていて、むしろストレスが強く影響しがちな点を除けば、基本的なメカニズムは同じです。
ホルモンとは、こういう物質です。 体の働きを制御する命令伝達経路には、神経系(神経経由)と内分泌系(血管経由)とがあります。神経を通って命令を伝えるものを神経伝達物質、血管を通って命令を伝えるものをホルモンと呼びます。 神経系は細かく精密な制御を得意としますが命令を持続させるのが不得手です。内分泌系は、精密な制御は不得手なものの、比較的長い時間にわたり大きな作用を得ることができます。 ホルモンは、「たんぱく質・ペプチド」系と「アミン」系、「ステロイド」系とに大きく分けられます。性ホルモンはステロイド系で、原料はコレステロールです。