更年期障害 切り抜けよう。
更年期障害は、人によって原因が様々ですから、誰にでも同じような治療が行われるというものではなく、原因のどこに着目するか、患者さんが一体どうしたいのかによって治療法も様々です。
まず、性ホルモンが足りないのが諸悪の根源なら、それを補えばいいじゃないか、というホルモン補充療法は素人にも理解しやすいシンプルな考え方です。ホルモン補充でいつまでも若々しくいられるかも、と期待する方も多いのではないでしょうか。
ただし、性ホルモンにはがんを成長させる働きがあり(コラム参照)、無制限に使えるというものではありません。加齢と共に性ホルモンが減ること自体は自然現象なので、若い時と同じ量にするようなことは目標にせず、あくまでも数カ月程度、自律神経が対応できる程度にまで減少を緩やかにするとの位置づけになります。
後で詳しく述べますが、一過性の改善だけでなく、骨粗しょう症を予防するため、女性ホルモンのエストロゲンを長期間にわたって使用する場合もあります。
次に、バランスの崩れに着目する場合は、バランスの考え方が根底にある漢方の出番でしょうか。ホルモン療法が向かない、あるいはホルモン療法を行いたくない場合などには、「加味逍遥散」や「桂枝茯苓丸」などが有力な選択肢となります。
自律神経さえ正常に働いてくれれば良いのだと考える場合には、過敏に反応していると考えられる神経系を鎮めるか、もしくは反応が落ち込んでいる神経系を興奮させるような薬剤、もしくは全体の神経系全体のバランスを整える自律神経調整薬を用いることがあります。
精神的な症状をとにかく何とかしたいという場合には、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などが用いられます。
臓器に異常があるわけではないのだから、「要は気の持ちよう」と、自力で克服しようとする方もいるかもしれませんね。ただし、くれぐれも無理はしないようにしてください。
更年期は、単なる肉体の曲がり角だけでなく、同時に自身の退職や子どもの独立、知人との別れなどといった環境変化が起きやすい時期でもあり、そうしたストレスは脳機能を抑制し更年期障害の症状を重くします。精神症状が重くなると、症状に耐える力も衰え、さらに精神に悪影響を与えるという悪循環が起きる可能性があります。
本物の精神疾患に発展しないうちに、早めに医師に相談してください。
ホルモンはがんを成長させます。 乳がんの中には女性ホルモンであるエストロゲンがくっつくと増殖のスイッチが入ってしまうものがあります。同様に前立腺がんは、男性ホルモンのテストステロンなどによって増殖が活発になる場合が多いのです。 このため、これらのがんが見つかった場合、再発や成長を防ぐために、増殖させるホルモンを打ち消すような物質を体内に入れたり、ホルモンを分泌している器官を取り除いてしまったりという療法が選択されることがあります。