一体何なの? カルテ
何がどんな風に書かれているの?
前項で、「カルテ」は法的に定めのある公式記録だと説明しました。ならば書式や用語も法律に定められているのかというと、そんなことはありません。結果として、カルテの形式は医療機関ごとに微妙に異なります。
これは、カルテというものが医療法の制定以前から使われていたものであること、医療が国家の統制ではなく属人的な努力で発展してきたことが影響しているとみられます。
つまり、各大学や各医療機関あるいは各診療科が、それぞれの領域内で使いやすいよう、独自に工夫を重ね現在のスタイルに落ち着いているわけです。それを敢えて一本化するメリットもなかったし、もし一本化しようとしたら収拾がつかなくなると考えられてきたわけです。
とはいえ、根本の制度や考え方、方法論が医療機関によって異なるわけではないので、カルテも基本的な部分の書式は一致しています。
基本的でないものをどこまで含むかは、何でもかんでもカルテに入れると保管スペースが大きくなり、しかもかえって必要な情報を見つけづらくなるため、各機関ごと取捨選択が行われています。
いくつかのパートに分かれています。 カルテの一番上のページ(表紙)にあるのは「基本情報」と言われるものです。受診者の住所・氏名・年齢・性別、保険の種別や番号、アレルギー歴や感染歴といったリスク情報などが、これにあたります。 次に来るのが「初診時カルテ記載事項」。どんな職業につき、どんな家族構成で、どんな生活をしてきた人かという生活歴・社会歴・家族歴や、どんな病気にかかってきたかという既往歴、現在の病歴、それから受診者が何を訴えて来院したのかという主訴が記載されます。 ここまでは初診の時に書いてしまいますので、再診の時よりだいぶ手間がかかるのが分かりますね。 ここからは「2号用紙」と呼ばれるもので、いつどんな診療をして、どのような処置(検査や投薬など)を指示したかということを、診療行為が行われる度に逐一書き込みます。 この際、単なるメモに済ませず、効果的な治療へつなげるため、「SOAP形式」(コラム参照)で書くことが推奨されています。 カルテの末尾(裏表紙)は、診療行為の保険点数を記載するようになっています。これに基づいて、受診者からの料金徴収と保険請求とを行うわけです。診療行為を記載し忘れると、料金も取りっぱぐれることになります。 入院治療では、法的根拠はありませんが看護記録も加わります。また、検査結果や紹介状などもカルテに綴じ込まれるのが一般的です。 入院患者が退院するにあたり、在院中に行われた治療行為等を要約した「退院サマリー(退院時要約)」というものを書くことになっています。入院期間が長いケースでは一定の経過毎に「サマリー」を記載することがあります。
SOAP方式とは SはSubjectiveで患者の訴えなど主観的データを指します。同様にOはObjectiveで検査結果など客観的データ、AはAssessmentでSOについての評価、PはPlanでSOAに基づいた治療方針ということになります。 記載する項目を、この4つに分類して書くようにすることで、効果的な方針を立てやすくなるというのがSOAP方式です。