患者の知らない診療明細 レセプト
医療機関は、患者の見ていないところでお金をもらっています。
と書くと、あらぬ誤解を受けそうですが、診療に伴う収入の7割以上を保険から受け取っていて、でも金額を患者から保険者に連絡してないのは事実ですよね。
どうなっているんでしょうか。
監修/神津仁 神津内科クリニック院長
山口拓洋 東京大学特任准教授
基本的なところから。多くの場合、医療機関を受診した時に医療費の3割を患者が自己負担し(高額の場合は後で戻ってきます)、残りを保険者が支払います。日本の健康保険医療費は原則として出来高払い。行った医療行為の分だけ全国共通の単価設定で支払われます。ある患者が、ある期間にどこでどんな医療行為を受けたか分かれば、保険者の支払金額も自ずと分かることになります。
その「どの期間に、どこで、どんな」の記録されているのが、今回のテーマのレセプトです。診療報酬明細書ともいいます。別に請求書もありますが、当然のことながらセットなので請求書に関しては特に説明しません。
図をご覧になりながら、お読みください。
レセプトは、1カ月単位で患者ごとの診療請求内容を入院・外来、医療保険別に分けて規定書式に取りまとめたものです。と簡単に書きましたが、全国の医療機関が1カ月につくるレセプトを全部合わせると約1億2千万件にも及びます。
各機関は、たとえば2月の診療分なら3月10日までというように、毎月10日までに、都道府県ごとにある国民健康保険団体連合会(以下、連合会。主に国民健康保険、後期高齢者医療保険が対象)か社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金。主に社会保険が対象)に、この膨大な数のレセプト・請求書を提出します。
連合会と支払基金は、まずレセプトの審査を行います。本来は保険者が個別に行うべき業務を代行している形です。
この「審査」が日本の医療の形を大きく規定しており、問題にされることも多いので、次項で詳しく説明します。
審査を通ったレセプト・請求書は、先ほどの2月分の例であれば4月10日までに保険者に引き渡されます。保険者は、同じ月の20日までに連合会・支払基金へ払い込み、それを受けた2団体は翌21日までに医療機関の銀行口座に振り込みます。つまり、決済に関しても2団体が代行していることになります。
レセプト開示
最初に患者の見えないところで処理されていると書きましたが、それを見えるように「開示請求」することは可能です。請求できるのは、患者やその家族・遺族もしくは委任を受けた弁護士です。請求先は保険者になります。費用はかかりません。所定の開示依頼書に、診療を受けた時期や医療機関名などを記入し、本人であることが確認できる証明書を示して申し込みます。
保険者は請求があると、開示しても治療に支障がないかどうか医療機関に問い合わせ、その結果、病名の告知が済んでいないなどの問題がなければ開示されます。