一体何なの? カルテ
カルテ、見たことありますよね。
あなたのカルテもきっとあるはずです。
でも何のために存在して、何が、どんな風に書いてあるものか知っていますか?
監修/亀田信介 亀田総合病院院長
澤 智博 帝京大学本部情報システム部長
荒井章夫 亀田総合病院システム管理室室長
松尾 毅 亀田総合病院医療情報管理室室長
誰のためのもの?
カルテがカードを意味するドイツ語で、森林太郎(鴎外)以来の日本の医療がドイツをお手本にしたから、そんな名称になっている。こんな話、皆さんも恐らくどこかで聞いたことあるでしょう。要するに「カルテ」というのは、紙のあれのことですよね。
皆さんのカルテがあるはずと言い切れるのは、カルテが法的根拠のある公式記録で、医師が診療を行った場合には必ず作成・保管しないといけないものだからです(コラム参照)。
さてここから、本題に入ります。カルテの役割は何でしょうか。誰のためにあるものでしょうか。
もちろん究極には患者の治療のために存在しているのですが、記入したり読んだりしているのは誰でしょうか。電子カルテへ移行した医療機関を受診している方は、分かりづらいかもしれません。その場合は、昔の記憶を辿っていただけると幸いです。
医師? そうですね。医師はカルテで過去の経過を確かめたり、何か書き加えたりしていますね。では、あれは医師の備忘録のようなもので、医師しか使わないものなんでしょうか。
いえいえ、そんなことはありません。入院したことのある方は、看護師がカルテに何か書き込んでいるのを見た覚えはありませんか。それから、診療後の会計をする際にカルテが回ってきた、こんな経験のある方もいるのでは?
そうです。患者の状態と何が行われどうなったかの経過を、関係する者がそれぞれの立場と目的に応じて共有する「連絡簿」としても使われているのです。「診療録」と「連絡簿」を必ず兼用せよと定められたわけではありませんが、別個に作る手間を考えたら兼ねてしまうのが合理的です。ちなみに、関係者の中には患者自身も含まれますので、見せてほしいと要求すれば(末尾コラム参照)、見せてもらえることになっています。
先ほど述べたようにカルテは公式記録ですから、下した診断、行った診療行為は必ず書き込まねばならないし、もし書き込まれていない場合、裁判などでは診療行為自体がなかったと見なされかねない代物です。
当然、法律には診療後「遅滞なく」記載するよう定められていますが、絶対に守られているかというと疑問符がつきます。また情報共有のためには、誰が読んでも理解できないといけないはずですが、書いた本人しか分からないような例も少なくありません。なぜ、そんなことになってしまうのでしょうか。
毎度おなじみ医師法 その24条。 24条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。 2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。