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それでいいのか薬価

26-2-1.JPG今回のテーマは薬の値段に関することです。
皆さんの懐に響くだけでなく、実は社会の形にも大いに影響を与えています。

監修/郡司篤晃 聖学院大学教授
    小野俊介 東京大学准教授

こんな風に決まる
26-2.1.JPG 医師の処方箋を必要とする医療用医薬品は、ふつう健康保険が利き、そして国の定める全国一律の公定価格があります。それが薬価です。通常はその3割の金額を患者が払い、7割を保険者が払います(次々項コラム参照)。本当に公定価格が必要なのかを考え始めると、保険制度の根幹について議論しなければならず、この紙幅では手に負えなくなるので、今回は薬価が存在するというところから話を始めます。
 まずは、その決まり方を説明してしまいましょう。
 図をご覧ください。承認を受けて最初に価格が決まる(これを保険に収載されると言います)には、①類似の薬が過去になく初めて医薬品承認された場合、②すでに類似の薬のある場合、の2通りあります。
 非常に乱暴に括ってしまいますと、①は「製造原価」の約2.5倍がベースに、②は類似薬の薬価がベースになります。どの程度画期的か、有用か、先進各国での価格とかけ離れていないか(コラム参照)などが検討され、微妙に加算されるわけです。この微調整や最終決定を行うのは、中央社会保険医療協議会(中医協)というところです。決め方や金額が妥当かについては、後ほど改めて考察します。

先進諸国では、こう決まってます  欧米先進4カ国の薬価と大きな薬価差がある場合、日本の薬価は調整されることになっています。では、その4カ国では薬価をどのように定めているのでしょうか。  米国の場合、公定価格はなく、個々の保険者と製薬会社との交渉に任されています。英国では、製薬企業の利益率に枠をはめ、間接的に薬価の上限を定めるPPRS制度で運用されています。独では、同系統の効能ごとに保険負担の上限を定める参照価格制度があり、仏では、医療上の有用性(SMR)や既存薬からの医療上の改善度(ASMR)を判定して薬価に反映させる制度が採られています。  いずれの国でも、分量に関係なく薬ごとの1包あたりの価格はほぼ同一という「フラットプライス制」が採られており、この点が日本と大きく異なるところです。

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