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ニュース〜医療の今がわかる

韓国の患者会は、こうして成果を挙げた ~グリベックの場合

IMGP0514.JPG 慢性骨髄性白血病の特効薬『グリベック』の費用が高価なために、患者が苦しみ不安に思っていることを先日お伝えした。日本では1錠3100円強するのに対して、お隣の韓国では1800円程度で、さらに14%引き下げられることが今月に入ってから決まったという。この差は、単に経済水準を反映しているだけでなく、薬価決定の際に患者たちが激しく活動したことも影響しているらしい。韓国の活動の中心人物が来日して12日、都内の講演会に参加した。(川口恭)

 来日したのは、運動をリードした姜柱成・患友会会長と運動を広げるのを手伝った崔鐘燮・ル山友会会長の2人。「患者自らの思いを実現させるために『自ら活動し、工夫していく』ための患者活動を応援する」ために結成されたというPtSupportなる団体が招き、

-患者自らの活動と工夫-
「抗がん剤無料化~韓国患者に学ぶ~」
という講演会(実行委員会代表は田中祐次・東大医科研特任助教)を開いたもの。

 日本側からも、大谷貴子・全国骨髄バンク推進連絡協議会会長、田村英二・いずみの会代表、野村英昭・CMLの会代表の3名が登壇した。

 会の時系列に従って、主な発言を紹介していく。

[崔鐘燮・ル山友会 会長]
 2000年に慢性骨髄性白血病を発症し、1カ月しか生きられないと言われたが、幸いに素晴らしい医師と出会って10年近く生きている。今54歳だけれど、主治医からはあと35年生きられると言われている。

 治療効果と体力増進のために色々な運動を試した。結論として山登りが一番合っている。そこで05年5月に慢性骨髄性白血病の患者と医療者とでル山友会を組織した。毎月50~60人で集まって、お互いに難しいところを助け合いながら、持ち寄った食べ物を食べながら、それぞれの知っている情報交換をしながら山に登っている。医療者からは講義なんかもしてもらっている。この活動を通して、医療者と患者とが上下関係ではなく横のつながりとして発展してきた。もちろん体力も増進して治療効果も期待できる。年に1回1泊2日で全国に散らばっている患者を集めたキャンプもしている。その際には医学セミナーもしてもらっている。

 白血病の治療は医療者と薬がメインと考えるのが一般的だと思うが、私は自分から動きだす力が治療の50%を占めると思っている。自分を粗末にしてはならない。自ら努めて、よい考えを持ち、質のよい食べ物を食べ、適度な運動をしていってほしい。そのためにも山登りを推薦したい。

 そして私はもっと大きな効果を得るためにヒマラヤ登頂を試みた。当然に多くの人が反対した。白血病ではなく高山病で死んでしまうのでないかという人もいた。しかし、どうせ死ぬなら何を怖がる必要があるか。ということで06年1月に、医師からOKが出ていて本人も強く希望するという人たちと一緒にヒマラヤへ行くことにした。先立って長くも短くもない6カ月間の訓練をおこなった。個人個人も日々の運動を継続した。過程で辛かったこともあるが、しかし05年12月にヒマラヤへ向かった。

 目的地は標高3700メートルのキャンプ。健康な人なら5日から7日で到達するコースを我々は10日から12日かけて挑戦することにした。もちろん困難はあった。高山病は2900メートル辺りから現れた。初めての経験だったが、本当に息苦しくて頭が痛くてめまいがする。一歩一歩が本当に苦しく、互いに助け合い背中を押しあいながら、食べるもの着るもの居るもの全て持っていかなければならなかった。もちろんポーターさんもいたけれど、1人1人35リットルのリュックサックを背負い辛かった。しかし、そこでやめることはできなかった。なぜなら私たちを見守る患者や家族がいた。希望は私たち自身でつくっていこうというスローガンをつくって臨んでいた。

 山に入ってから12日目に目的地へ着いた。何も考えが浮かばず頭が白くなって、涙だけが流れた。

 降りる時には助けてくれる友達がたくさんいて、いろいろな方法で降りてきた。ヘリで降りてきた人もいた。12日かけて昇ったけれど20分で降りてきた。

 降りてみたら、また挑戦したくなって、二次登山を企画した。07年6月、今度は4800メートルのメルタルペッスル(?)へ挑戦し16日目で登頂を果たした。

 このように患者という立場ではあるが、できないことはないと確信している。皆さんも体力を整え高い山へ行ったらいかがでしょう。私と一緒にヒマラヤへ行きませんか。自分自身も希望は自分自身でつくっていくことです。

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