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臨床研修と医師不足 その微妙な関係

どこで研修するか、それが大問題。

 前項で自動車運転免許の教習にたとえましたが、臨床研修も決められた場所で受けなければなりません。教習所にあたるのが研修指定施設で、設置診療科や指導医在籍など一定の基準を満たした医療機関が手を上げ、受け入れる研修医の定員を示します。
 新制度以降、過去には研修医を受け入れていなかったような一般の市中病院も、こぞって受け入れるようになりました。指導医への手当や研修医の給料補填などに公的助成が行われるため、手を上げやすくなったのです。医師の頭数が増えると何かと助かりますし、何といっても自前で医師を育てられれば、後述するように大学病院からの派遣だけに頼らなくて済むメリットがあります。
 結果として、研修希望者が約8000人なのに定員は1万1000もあるという状態になりました。裏返すと、かなりの病院で必ず定員割れが起きるわけです。そして研修予定者は、全国どこの指定医療機関へ応募してもよいことになっています。個別に願書のやりとりや試験を行っていたのでは大変なので、研修希望者と研修施設とで全国一斉の集団お見合いをします。これを「マッチング」と言います。
 さて、世間でどう思われているかは別にしいて、一般に若い医師には向上心の高い人が多いですし、そうでなければ困ります。
 向上心の高い免許取り立ての医師が、どんなことを願うでしょう? そう、早く一人前になりたいということですね。できることなら腕の良い医師として社会の役に立ちつつ尊敬されたい、と思います。そんな前向きでなくても、いずれ独り立ちして様々な責任を問われる立場になることを考えたら、学べることは何でも吸収しておきたいのが人情です。
 願うのは、頭が柔らかく、体も無理が利くうちに、良い先輩の指導を受け、数多くの症例を経験したいということ。研修期間を楽に優雅に過ごしたいなどとは、普通思いません。
 この点、特に地方の大学病院は難病など特殊な症例が集まる傾向にあり、一般的な症例の数が市中病院に比べ少ない弱みがあります。研修医に有効に場数を踏ませる点でも、ノウハウの蓄積がある市中病院に比べ殿様商売的です。しかも大学病院は研究という使命もあって、診療以外の雑用が多い傾向にあります。
 結果、市中病院を志望する研修医が予想外に多く、地方の大学病院は定員割れという事態に至りました。
 それでも、初期研修2年の後、後期研修を以前のように大学医局で受ける研修医ばかりなら問題にならなかったのでしょう。しかし当然というべきか、初期研修を受けた施設や地域で後期研修も受けたいという研修医が多かったことから、大学で一気に人手が足りなくなり、派遣先の医療機関から引き揚げざるを得なくなった。これが一般的な説明です。
 よく見ると、医師の総数が減ったわけではなく、地方の大学医局で医師が減ったことが「医師不足」につながっていることが分かります。どうして、こんなことになるのでしょう。
 研修医がどのような役割を果たしてきたか、大学の医局がどのような役割を果たしてきたかを知らない身には、ピンと来ません。次項で、さらに詳しく見ていきましょう。

学位か専門医か  以前は、研修が一通り終わると、医学博士号(学位)を取りに大学院へ4年ほど入るのが一般的でした。大学院生は学費を払い、なおかつ宿直・当直アルバイトに行ったり診療をしてくれたりするという、医局にとっては何ともありがたい存在です。 しかし学位は、「足の裏の飯粒(取らないと気持ち悪いが、取っても食べられない)」と揶揄されるものなので、最近では学位を取らずに「専門医」や「認定医」をめざす人も増えています。その場合、経験症例数が受験資格になるため、そうした医師たちは症例数を積める市中病院に勤めたがります。

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