増えてます。あぶないです。 肺炎
うつらない?
肺炎というと、なんとなく咳き込んでいるイメージがあります。これが「インフルエンザのせいで」と聞かされたら、ちょっと御免蒙りたいもの。うつされるのはもちろん、うつすのも避けたいところです。では肺炎は人にうつるものなのでしょうか。
たしかに、肺炎を起こすウイルスや細菌は、主に患者のくしゃみや咳、またそれらがついたものを触った手から、人の口に入り、肺へと感染します。ただ、肺炎を起こす病原菌といっても、あるものは食中毒の原因になったり、またあるものはいろいろな感染症を引き起したりと、必ずしも肺炎専門というわけでもありません。また体の中に入っても体力が弱っていなければたいていは発症しにくいのです。というわけで、肺炎そのものが「人から人へうつる」という考え方は、いつも正しいとはいえないようです。実際、先ほどお話した肺炎球菌は、健康な人の口の中にもしばしばすみつくもの。0~5歳の乳幼児に多いとされるくらいです。
それでも、まさに「うつる!」というイメージがぴったりの肺炎が、つい先ごろ話題になりました。新型肺炎、いわゆるSARS(重症急性呼吸器症候群)です。原因となるSARSウイルスは、もともとはコロナウイルスというかなり身近で、"悪さ"もほどほどのウイルス。鼻風邪など、ごく普通の風邪を引き起こしていただけだったのが、何らかの原因で変異して、重症の肺炎を引き起こすようになったのです。短時間に多くの人にうつっていったことは、ご記憶にあるかと思います。
感染するけど
「人からうつらない」?
たとえば、レジオネラ肺炎は耳にしたことがあるでしょうか。以前、消毒機能のない古い機種の24時間風呂を使用していた人たちに、発熱、呼吸困難、筋肉痛、下痢などの症状が多発し、死亡例も出ました。原因のレジオネラ菌は、温泉や腐葉土など、ごく身近な水があるところに潜む細菌。消毒されない循環性の温泉やお湯を替えないでいたお風呂で大量に増殖してしまい、感染したようです。感染性でも人を介さない「人から人へうつらない」肺炎というわけです。他にも、まったく別の意外なきっかけで肺に病原菌が繁殖し、炎症を起こすことがあります。誤嚥性肺炎とよばれるもので後ほど取り上げます。
また、抗がん薬など薬剤が引き起こす肺炎もあります。これまでご紹介したのとは違って、肺の一部でなく全体に炎症が起きてしまうタイプの肺炎(あるいは「肺臓炎」として区別されます)でもあり、上記コラムでご説明しています。
薬の副作用と間質性肺炎 数年前、肺がん治療薬ゲフィチニブ(商品名イレッサ)の副作用によって肺炎となり、死亡したという例が相次いだことが報道され、大騒ぎとなりました。この場合の肺炎は「間質性肺炎」というもの。肺全体を支える間質という組織が炎症を起こし、治療も困難なことが多いようです。一方、本文で取り上げている肺炎は、酸素の入れ替えを担っている肺胞に炎症が起きる「肺胞性肺炎」というもので、原因や症状など性質が違います。副作用による肺炎は、薬が肺の組織を直接傷つけたり、薬に対するアレルギー反応によって炎症がおきたと考えられていますが、詳細は不明。重大な副作用を起こす薬は、抗がん剤、抗リウマチ薬、漢方薬などが知られています。主な症状は、たんが出ない咳、呼吸困難、息切れ。肺全体の炎症なので呼吸がとても苦しくなります。このような症状が出たら、使っている薬をすぐに中止し、主治医に連絡してください。 また、同様に間質に炎症を起こすもののひとつに、夏型過敏性肺臓炎があります。原因は家のカビ。夏に繁殖したカビの胞子が肺に入り、アレルギーを引き起こすためです。