冷えに負けずに冬を乗り切る
病原体にご用心の感染症
最後に、冬といえばおなじみの「かぜ」に代表される感染症を説明します。一般には、病原体(主にウイルス)が感染することによって、鼻や喉など呼吸の際に空気の通り道となる部分が炎症を起こすものです。食中毒のように胃腸に主な症状が出るものもあります。感染源によって、症状の出る場所や程度が異なります(05年11月号参照)。
なぜ冬になると増えるかといえば、①体の抵抗力が落ちる②病原体の生息に適した環境になって感染力が上がる、の2つの理由があります。
体の抵抗力は、大きく分けて物理的バリアと免疫システムとの2段階あります。前者の物理的なバリアとは、病原体を体内に入れないようにブロックする皮膚や粘膜など、あるいは入ってしまったものを体外へ流し出したり殺菌したりしてしまう涙や胃酸などの液体とで構成されています。
これをくぐり抜けて体内に入ってしまったものは免疫の出番で、白血球が体内に入り込んでしまった病原体を食べたり破壊したりしてくれます。ただし、病原体がある程度以上に増殖している場合は、免疫の戦う過程で炎症が起きて不快な症状の元になりますし、体力も奪います。
炎症にならないためには、物理的バリアの段階で食い止めるに越したことはなく、その物理的バリアが健全に保たれるには、栄養と酸素の補充が不可欠です。血行不良だと体の抵抗力が落ちるのは当然と言えましょう。他の冷え対策と同様、バランスのよい食事をして、疲れをためずに十分な睡眠を取るという当たり前のことが大切です。
もっとも感染症の場合は、あくまでも病原体の感染力との相対的な力関係なので、②も無視できません。
病原体の生息に適した環境とは、一般に低温乾燥で宿主の密度の高いところです。低温乾燥が冬ならではの条件。宿主という難しい言い方をしてしまい恐縮ですが、要は病原体を体内に保持している生物のこと。人や哺乳類、鳥類のことだと思っておけば、ほぼ間違いありません。
引っ繰り返して考えると、住居に病原体の生息に適した環境を作らない、宿主の多そうな場所には近づかない、やむを得ず近づく場合も病原体との接触を減らす、病原体を生活の場に持ち込まない、ことが対策になります。
何か特別なことのように思えたら申し訳ありません。具体的には、室内を低温にしたり乾燥させたりしない、外出の際にはマスクをする、家に帰ってきたら必ずうがい手洗いをするという、ごくごく当たり前のことです。
なお、新型インフルエンザ(08年1月号参照)は、感染症ながら他のものとちょっと質が異なります。発生からしばらくは医療をアテにできないため、自らの体力・抵抗力と危機管理次第の面があるからです。
どうぞ、冬に負けずにお過ごしください。