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特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

患者を支える5

全国パーキンソン病友の会
*このコーナーでは、様々な疾患の患者団体や患者会がどのように患者さんを支えているのか、ご紹介していきます。

 4月11日は、世界パーキンソンデーでした。パーキンソン病とは、脳の細胞が変性して、その細胞でつくられている神経伝達物質のドーパミンが足りなくなり、体が震えたり、こわ張ったり、動かなくなったりする原因不明の進行性神経難病です。原因不明ということは、言葉を換えると誰でもなる可能性があるということになります。中年以降に発症することが多いのですが、若くして発症することもあります。現在日本には約14万人の患者さんがいると推計されています。
yaaruhyou.JPG< 症状の重さによって5段階に分けられ(表参照)、ヤール3より重いと「特定疾患治療研究事業」の対象となって、医療費の公費助成が行われています。
 決定的な治療法はまだなく、ドーパミンの働きを補ったり増やしたする薬を飲んで日常動作の助けとする、あるいは補助的な手術が行われます。しかし薬の副作用が強く、しかも飲み続けると薬への耐性ができて段々効かなくなったり、薬の効果が突然切れたりするという厄介な特徴があります。また、動くのを怖がっているうちに関節や筋肉が衰えてしまう廃用症候群になったり、心を病んだりすることも少なくありません。
 発症後もできるだけQOL(生活の質)の高い状態で過ごすには、薬をきちんと飲むこと、廃用症候群にならないよう体を動かすこと、過度に落ち込まず心穏やかにすることが大切と言われていますが、どれも独りではなかなか難しいことです。そこで今回も自然な流れとして登場するのが、患者で集まり励まし合おうという「友の会」です。
 73年に愛媛県で患者4人が集まって会を結成したのから始まって76年に東京・神奈川にも友の会ができ、この年に3都県の会が合同して全国友の会になりました。以後、着実に支部と会員を増やし、現在は46支部8千人の組織になっています。

社会の認知上げて、隠さない病気に

 その本部は、東京・中野の住宅地にあります。表通りから一本裏の道に面した半地下。サッシのガラス越しに中の様子がちょっと見えます。
 迎えてくれたのは、事務局長の一樋義明さんと事務局次長の宮澤信義さん。宮澤さんは患者で、健常者の一樋さんは勤めていた時の上司が患者だった縁で、退職後に声がかかって役目を引き受けたのだそうです。スタッフは7人いますが、常勤(といっても、ほぼボランティアです)は一樋さんだけです。
 「我々の当面の課題は、この病気に対する社会の認知度をいかに上げるかです」と宮澤さん。背景には二つの危機感があります。
 一つは、社会的な認知が低いゆえに誤解されていることも多く、パーキンソン病と診断を受けた人が不利益を恐れるあまり、極端な場合では家族にすら秘密にしていることがあるのだそうです。実際、ヤール1や2で何の治療も受けていない人が相当数存在します。隠していれば、当然ながら適切な治療の開始が遅れて、その後の経過に悪影響を及ぼします。
 何とかしたいということで、会では毎年パーキンソンデーのある4月に署名活動を行って政府や国会に要望書を提出しています。要望項目の中心になっているのが、ヤール1、2の人に対しても治療費の公費助成を行ってほしいということ。社会の認知との関係で言うと、卵と鶏のようなものです。しかし、お金のかかる話であるため、未だかつて要望書が国会の厚生労働委員会で採択されたことは一度もありません。
 もっと切実なのが、公費助成範囲の狭まる可能性があることです。現在9万人ほどが公費助成を受けており、今後、患者数がどんどん増え助成対象者も増えていくと予測されています。医療費抑制の流れの中で、全体の半数を占めるヤール3の患者さんを助成対象外にしようとする動きが過去にありました。それを押し返すには、社会の理解が欠かせません。
 一樋さんは「署名を集める時、あなただって可能性があるんですよと、言ってます」と話しますが、直接話せる相手は限られていますので、行政やメディアを通じて何とか実像を伝えられないものかと考えているそうです。
 「患者さんそれぞれの感じ方次第ですけど、独りで闘病するより友の会に入った方がQOLはよくなると思うし、そうやって会員が増えれば社会に対して働きかける声も大きくなるので、35周年の2011年には会員数1万人をめざしています」。

会の活動  会費は年1500円。患者や家族から日々の電話相談を受けているほか、毎年4月上旬に募金と署名を集めて、政府と国会に要望書を提出している。また、日本難病・疾病団体協議会の有力構成組織として人と物の両面で会の運営をサポートしている。  このほか本部では、各支部が独自に会報を発行して送る際、障害者団体に認められている低料第三種郵便制度の適用を受ける手続きを代行するというようなことも行っている。  同会の連絡先は 03-5318-3075
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