誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

患者を支える9

NPO法人 日本コンチネンス協会
*このコーナーでは、様々な疾患の患者団体や患者会がどのように患者さんを支えているのか、ご紹介していきます。

 排泄は、生きている限り必ず行われる自然な営みです。しかし、排泄物には不快な匂いがあり、また感染源ともなりうることから、我が国では忌むべき存在として扱われています。失禁などのトラブルは、社会生活が不自由になり、非常に深刻でしかも相談しづらい悩みです。
 今回ご紹介する「日本コンチネンス協会」は、失禁や排泄困難などに悩む人々をサポートして、「すべての人が気持よく排泄のできる社会を目指す」という団体です。英語で失禁は「インコンチネンス」という言葉で表現され、「コンチネンス」は、その反対の意味です。排泄や失禁という言葉のマイナスイメージを、もっと前向きなものに転化すべく、この言葉を用いているとのこと。
「すべての人」とまで高らかに謳いあげられるのは、失禁は様々な要因によって起こっているものの、そのほとんどは要因を治療することで治る可能性が高く、完全に治らなくとも用具や住宅環境を整えることで対処できるからだそうです。一方で、それが医療者も含めて、社会全体に理解されているとは言えず、適切な対処がされないまま苦しんでいる人も大勢埋もれていると考えられています。
 協会では、本人や家族からの電話相談に応じているほか、治療法や自助具の研究開発を支援したり、主に専門職を対象とした教育事業(会の活動説明参照)にも力を注いでいます。この教育によって地域のリーダーが育つことを期待しています。また一般への啓発活動も行っています。

社会に広めるため近く分割の予定

 早速お邪魔してみました。協会の本部事務局は東京・杉並区の住宅街のアパート1階の一室でした。靴を脱いで上がると、西村かおる会長が迎えてくれました。
 協会は、89年3月、英国で排泄看護を学んで帰ってきた西村会長中心の「失禁勉強会」としてスタートしました。
「英国へ勉強しに行ったのは、訪問看護をしていて、排泄の問題が大きな課題だったけれど、誰も解決策を持っていなかったからです。歳だから仕方ないという程度で、実際には若くて悩んでいる人だっているのに、問題が表にすら出ていませんでした。一方で英国には、既に排泄のスペシャリストナースがいました」と西村会長。
 英国留学中に、その体験と知見を広めて社会運動化したいという希望を看護雑誌に連載していました。それを読んで帰国を待っていた医師や看護師、企業関係者、雑誌編集者、工業デザイナーといった面々50人近くが集まってきて勉強会になり、どんどん参加者が増えました。
 翌年には「コンチネンス研究会」と名称を変更、この時から電話相談を始めました。その電話相談によって悩みが軽快した当事者たちも、感謝の気持ちを還元したいと会員に加わるようになりました。93年に協会へと改組し、昨年NPO法人化しました。全国に8支部、700人あまりの個人正会員と約30の法人会員がいます。
 実は、個人会員の8割程度は医療・介護職だそうで、そのことが会のリーダーたちに、ある決意を促しました。
 「数年のうちに、研究開発と教育は新たに立ち上げる学会で担うようにします。その学会には、医療や介護の視点だけでなく、文化的な視点も取り入れて、排泄を文化として取り扱うようにしたいと思っています。協会には、電話相談と一般への啓発の市民活動の部分を残し、会費も下げて、もっと広く参加を募る予定です。第一歩としてNPO法人化しました」
 協会は、教育の部分で各学会の専門医認定に似た「排泄ケア専門員」認定というカリキュラムを持っており、それがゆえに会費も高いし素養や意欲も必要で、一般の人からすると敷居が高くなってしまっています。一方、真面目に勉強しようという医療者が、一般向けイベントを企画するような活動に向いているかというと、むしろ一般人の方が向いています。このジレンマで、運動の広がりが若干足踏みになってしまっているのだそうです。
 「もっと運動を広げないと、資金不足と担い手不足という、こういう団体共通の悩みを打破できません」
 資金があったら、まず電話相談を充実させたいと言います。現在、電話相談は排泄ケア専門員2級以上の資格を持ったボランティアが受けています。そのボランティアをすることが、2級の資格更新要件にもなっているのですが、しかし全体の数が限られているので、月に計6~9日のそれも日中しか受けられていません。件数は月20~50件ほどに留まり、広報するにも及び腰になります。
 「相談を年中無休で夜間にもできるようになって、それを広報できるようになったら、ずいぶん世の中が変わると思います」

会の活動  個人正会員は入会金3000円、年会費7000円。賛助会員は年会費1口1000円。谷川俊太郎さん作詞のオリジナルソングも持っている。  電話相談、一般人への正しい情報伝達、医療従事者の知識向上、イメージアップ、当事者とケアする人の負担軽減、治療法や自助具の研究・開発などを行っている。毎月1回会報の『コンチネンスナウ』を発行。  最も力を入れている教育活動では、初級・中級・電話相談・上級の4段階のセミナーを開催。中級以降は、修了後に試験を行い、その合格者を「排泄ケア専門員」の3級、2級、1級として認定する。3級、2級は5年毎に更新が必要で、2級更新のためには5年間に15件以上の電話相談を受ける必要がある。   同会の連絡先Tel 03-3301-3860
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