〔自律する医療⑥〕日本の医療 外国人にはナゾ
受審がとにかく大変だったという話を続けてきたが、当然メリットも想定されている。
「日本には、英米オーストラリアと英語を母国語とする人々が大勢住んでいるけれど、彼らは病気になると治療のために帰国している」と、ジョン・ウォーカー特命副院長は語る。医療を産業として捉えた場合には、顧客をみすみす逃していることになる。
何度か述べているように、欧米の民間保険は保険金を支払う対象の医療機関の基準にJCI認証を用いていることが多く、その認証取得機関が日本に存在しない以上、日本で治療すると全額自費になってしまうことが影響している。しかし実は、もう一つ理由があるのだという。
「どの医療機関の質が高いのか、彼らには見分けがつかないから」
そんなバカな、ランキング本があんなに出回っているじゃないかと思うかもしれない。だが「日本で一般の人が医療機関を評価している基準は外形的なものばかりで、国際的な基準と異なる」という。
そして、自分たちの医療の質を外国人にも分かるように示している医療機関は日本には、ほとんど存在しない。結果的に「外国から見ると、日本の医療は本当にナゾが多い」と佐野元子・JCI事務局長にも言われてしまう状況になっている。外国人からすると、自分が受診しても迷惑がられるのでないかとの疑念すら抱かせるものらしい。
だから日本の医療者なら常識的に知っている「日本の医療は安い割に質が高い」ということも、外国人にはほとんど知られていないことになる。
そんな中でJCIを受審することは、世界の人々に自分たちの医療の質を公開します、世界の患者を歓迎しますと宣言する意味も持っているのだ。
今後は、少なくとも「亀田」に関しては英米豪の人々も安心して受診できるようになる。そしてその結果、「手技料がアメリカの10分の1、質はまあまあの日本で医療を受けようかという世界の人々が増えてくるはず」と亀田信介・亀田総合病院院長はもくろむ。
ウォーカー氏も「タイやインドがメディカルツーリズムに力を入れているけれど、政情とか街の衛生環境とかを考えたら日本の方がはるかに適している」と見る。
「繁華街は店がいっぱいあるから人が集まる。ウチ一つだけポツンとあっても、日本が医療のブランドにはならない。少なくとも病院名に『国際』とついている所は、JCIを取ってほしい」と亀田信介氏は言う。
(つづく)