メタボより怖い 慢性腎臓病CKD
腎機能は「ネフロン」の数しだい
腎臓は、握りこぶし大で背中側に左右2つあります。1日に約200リットルもの原尿を処理しています。1つの中に血液を濾過して尿にする「ネフロン」(コラム参照)という構造が約100万個あります。
ネフロンの中でも特に重要な構造が「糸球体」と「尿細管」です。糸球体は血液を濾過して原尿をつくり、尿細管が糖や水分、ミネラル分のほとんどを再吸収しています。腎臓が悪くなるというのは、糸球体か尿細管が機能しなくなってネフロンの減ることとほぼ同義です。一度壊れてしまったネフロンは、困ったことに二度と再生しません。
ネフロンが減ると、処理できる血液の量も減るわけですが、その時に血圧を上げネフロン1個あたりの処理量を増やして全体の量を維持しようとレニンが分泌されること、食塩に対する感受性が上がるのは前述したとおりです。血圧が上がると、さらに糸球体・ネフロンが壊れやすくなるという因果関係にあり、徐々に原尿の処理量(糸球体濾過量=GFRと言います)も落ちてきます。また、糸球体に穴が開いた場合は、本来は大きくて通れないはずのタンパク質が通過して、尿の中に出てくるようになります。
つまり腎機能の低下は、タンパク尿が出たり、GFRが下がっていることで判断できます。
ただし、激しい運動をしたり高熱を出したりすると急性腎炎になって一時的に同様の現象が起きることもあることから、CKDと診断されるのは、タンパク尿かGFRの低下が3カ月以上続いた場合です。そして、GFRの値によって5段階のステージに分けられます(次頁表参照)。
腎臓を壊すように働くものとしては、外傷、感染症、疲労のほかに、鎮痛薬など薬剤の影響があります。加えて、現代人では特に生活習慣病が大きな影響を及ぼします。
高血圧、糖尿病(06年1月号参照)、脂質異常症(07年7月号)、メタボリックシンドローム(06年12月号参照)といった生活習慣病になると、毛細血管が傷み腎臓も壊れる、さらに生活習慣病が進み、また腎臓も壊れるという悪循環が始まります。一度この悪循環が始まると、なかなか止められません。CKDステージ早期のうちに、手を打つことが大切です。
腎臓が尿をつくる仕組み
動脈から糸球体の毛細血管へ勢いよく血管が流れ込むと、その圧力で老廃物や電解質を含む水分が血管から「ボーマン腔」へ押し出されます。血管内には、血球成分やタンパク質が残ります。ボーマン腔に押し出された水分が「原尿」です。原尿の水分や電解質は、尿細管を通るうちに大半が血管に再吸収されます。残ったものが腎盂から膀胱に運ばれ、尿になります。
糸球体の中にある毛細血管には、大変高い圧力で大量の血液が流れ込んでいるため、もともと傷みやすくなっています。血管をもろくするような作用が働くか、高血圧にさらされるとバランスが崩れて穴があき、回復不能になります。炎症が起きた場合も、時として回復不能な状態にまで壊れてしまいます。