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梅村聡の目 ② 政・官の仕事は、民を支えることにある。

関西版『それゆけ!メディカル』限定コンテンツです。

震災支援で起きたこと
 
 3月11日の東日本大震災でお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表すとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
 私も16年前は大阪の十三に住んでおり、震源地から離れていましたが阪神淡路大震災を経験しました。ただ今回は規模も質も阪神淡路大震災と異なり、復興までより息の長い支援が必要です。日本全体の支え合いとして、皆様にはこれからも義援金や物資などのご協力をお願いいたします。
 今回は私の関わった被災地への医療支援についてお話しさせていただきます。
 「透析治療」という言葉を聞いたことがあると思います。血液を濾して尿を作り、不要な水や老廃物や有害物質を捨てて体内バランスを維持するという大切な臓器が腎臓です。その腎臓が機能しなくなってしまった人の血液を機械で濾過してから体内に戻す治療を「透析治療」と言います。一般に週3回、1回4〜5時間かけて行います。電気と水が大量に必要なので、物資が不足し混乱した被災地では安定した治療を提供するのが難しくなります。安全に透析を受けられる場所への移動が遅れれば遅れるほど、どんどん体の状態が悪くなってしまい、最悪は死に至ります。
 地震発生3日後の14日、知り合いの医師から、福島県いわき市に1200人ぐらい透析患者さんがいるので搬送したいという電話が来ました。東京の大学病院か千葉県の亀田総合病院などに移したいというのです。
 しかし、厚労三役の1人に連絡したところ、「他にも色々な患者がいる」と言われました。まずは被災地の患者さん全体の搬送体制を作って、その中で考えようということでした。
 私は一つでもいいから先に実績を作れば、皆がノウハウを学んで、自然にルートはできると考えていました。しかし彼は、先に枠組みだ、と言います。3回ぐらい連絡しましたけど、同じ答えばかり。
 そうこうするうちに16日になり、いわき市が困っていると伝わって来ました。ボランティアで患者を運ぶつもりのバス会社が「県の許可がほしい」と言い、県は「厚労省の許可がほしい」と言っているけれど、許可が出ないというのです。別の三役に伝えたところ、厚労省に調べさせるから連絡先を教えてと言われました。2時間ぐらいして厚労省から「県の担当者と電話がつながらない」と返事が来ました。
 タイムリミットだと思って、「この話は民間の話にしてもいいですか? 本当に県や厚労省の許可がなかったらできない話ですか?」と啖呵を切ったところ、厚労省も「そこまで言うんだったら動かして下さい」と折れました。
 ようやく17日にバスが動いて東京や千葉に約740人の患者さんが移動でき、無事に透析治療を受けることができました。
 民間でどうぞやってくださいと道筋をつけたのが、私のした仕事でした。でも、民間で自由にやるのは当たり前なんです。
 実は、大阪府の関係者に患者さんを受け入れられないかと訊いた際にも、厚労省から言われないと受け入れられないと言われました。それで厚労省に訊いてみたら、大阪府が受け入れたいと言ってくれないと我々は許可出せない、と。
 そんなもの、先に自分から言えばいいことでしょう。一刻を争う中、夜中の12時ぐらいにそんな話をしていたんですから悲しくなります。

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