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がん② きほんのき(下)


いよいよ確定診断のとき。

 画像診断や血液検査、症状など、前頁のような検査や診察をもとに下すのが臨床診断ですが、そこではまだ「がん」「がんでないもの」と確定されてはいません。病理医による「病理診断」(細胞診断を含む)を経てようやく確定となります。
 病理検査では、主治医が怪しいとにらんで採取した部位の細胞について、前回お話しした「顔つき」を顕微鏡で観察します。問題の細胞とその周囲も含めて見て、顔つきのおかしな細胞がどの程度あるか、細胞の形態や並び方がどうなっているかなどから、がんか否か、がんならその悪性度を判断するのです。
 しかし、必ず白黒ハッキリつくというものでもありませんし、臨床診断と病理医の見解が異なることもあります。それでも確定診断名は原則、病理診断に基づいて決まります(臓器の種類や病巣の位置等によっては、治療前に病理診断がつかない場合も。手術しないと組織を採取できないなど、画像だけでひとまず診断せざるを得ないこともありますが、その場合は、「××がんの疑い」となります)。

まず大事なのは状態の把握

 がんと診断が下ったら、あるいは疑いを持ったときから、自分の病気について調べて回りたくなるのは当然です。しかし、一番大事なことは、まず自分の病気の状態をきちんと把握すること。治療法を決めるにもどれが最適か、情報を集めるにもどれが必要か、自分のことを分かっていないと判断できないからです。
 以下、具体的に皆さんのすべきことを、順を追って見ていきましょう。
①診断、ステージ、など担当の医師からきちんと話を聞く。
 例えば病気の名前やステージが分からないと、いろいろな治療の情報があっても、自分にあてはまるのかが分かりません。
②持病がある、心機能が悪い、など、がんの治療に関係のある自分の体の状態を把握する。
 体調で不安に思う点があったり、過去に病院にかかった場合には医師にきちんと伝えましょう。
③主治医から、今後の治療や方針について、説明を受ける。
 1、2を踏まえて、どういう治療を行うのか、方針について、説明をまず聞きましょう。なぜその治療が良いのか、「あなたの場合はステージが早期なので、手術治療で治癒が望めます」とか「あなたの場合はこれまでの治療成績から、××が標準治療として行われています」とか、理由も一緒に説明してくれると、理解しやすいですね。また、治療の副作用についても、率直に質問すると医師も答えやすいそうです。
 1~3を通して、必ずメモをとりながら、医師の話をよく聴いてください。家に帰ってから「よく分からないな」と思うことがあれば、疑問点もメモしておきます。そして次回に質問をして、治療方法を決める前に解決するようにしましょう。

足りない病理医、活躍するコメディカル
 病理医の出番は治療前の検査だけではありません。手術で切り取った組織の端やリンパ節等にがん細胞がないかチェックして、取り残しや転移がないか調べるのも病理医の仕事。質の高いがん医療には必須です。しかし日本では社会的な認知度も低く、病理専門医の数は圧倒的に不足していて、3千人弱。国民の2人に1人ががんになる時代に、です。ちなみに化学療法と放射線治療も、専門医の少ないことが問題になっています。
▽また、今日のがん医療現場は様々な「コメディカル」の人々なしには考えられません。看護師や薬剤師のほか、放射線技師、検査技師はもちろん、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、臨床試験コーディネーターなど、多くの人々が患者の皆さんを心身ともに支えています。

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