がん② きほんのき(下)
治療法を決めるのは、よりよい人生のため。
さて、いよいよ治療法の決定です。医師が治療方針を説明し同意を求めます。
医師の説明に対して、前々項の①~③に納得がいった場合、治療方針があなたの希望とも
一致した場合には、すんなり決めてしまって問題ないでしょう。特に、早期の固形がんで医師が「簡単に切除でき、手術さえ乗り切れれば治癒の可能性が高い」と言っているなら、あまり迷うことなく、手術でお任せしてしまってよさそうです。
しかし、難しいがんで「簡単」な治療法がないか、逆に有力な治療法が複数存在する場合、悩む価値があります。
まずは「何をめざして治療するのか」、目標を明確にすることが大切です。ステージや発生部位、がん細胞の性質などによって、治療内容やできることは大きく違ってきます。
誰しも「根治」を選びたいところですが、がんの状態や体力を把握した上で、現実的な選択をすることが肝心。現在のところ医学的に有効性を認められたがん治療は、どんな形にせよ必ず身体へのダメージを伴います。非現実的な目標設定をすると、苦痛ばかり大きくて、効果が上がらなかったり、QOLまで損ないかねません。
なお、どこに目標設定した場合でも、治療やがんによる苦痛の「緩和」は並行されます。「緩和」の中には、痛み止めなどの薬を使うだけではなく、治療に取り組む気持ちを継続できるように支える精神的支援なども含まれます。
セカンド・オピニオン活用のススメ
医師と共通の目標が設定でき、それでも判断や治療方針などに気にかかることがある場合、あるいは医師からの説明に今ひとつ納得できなかったり、他の治療の選択肢がないかと悩むような場合には、他の専門医ならどのように判断するか相談できる「セカンド・オピニオン」を活用しましょう。遠慮する必要はありません。セカンド・オピニオンの希望を担当医に申し出るのは、患者の正当な権利です。
セカンドオピニオンを求める場合、病状をまとめた紹介状や、持参する画像の準備が必要です。実のところ医師の業務量も非常に多く、資料を整えるには時間がかかりますので早めに意向を伝えましょう。
なお、セカンドオピニオンは、あくまで「意見を聴く」ためであって、意見が同じなら元の医師に帰るものであり、転医するためのものではないと医療者は考えています。ところが実際には、セカンドオピニオンを求める場合、転医希望も多いようです。その場合には、転医希望である旨とその理由を、セカンドオピニオンとして意見を求めた医師にしっかり伝えましょう。ただ、受け入れる側にも事情があったり、それが患者さんの利益にはならない場合もあります。がんなら専門病院に行けばいいというものでもないことも、分かっておいてください。
普段から口腔ケアを 治療に入る前にやっておくこと、意外なところでは、歯の治療があります。とくに化学療法を選択する可能性がある場合、前もって虫歯や歯槽膿漏の治療を済ませておくことが大切。抗がん剤によって粘膜細胞がダメージを受け、また免疫力も低下するので、それまで大して悪さをしていなかったバイ菌が暴れるのです。体力を奪われる原因になりますし、ひどい場合は化学療法を中断しなければなりません。誰しもいつかかるか分からないがんですから、日頃から口内ケアをおろそかにしないことが一番です。