がん② きほんのき(下)
一番最初にご説明したように、初めての受診から治療が始まるまでには数日から数週間あります。つまりその期間、患者さん側でも、ある程度は情報収集したり家族で相談したりできるということ。ところが、実際には「がんの可能性」と言われた瞬間に多くの方は頭が真っ白になって、何が何だか分からないうち、言われるがままに治療が進んでいってしまうことも少なくないようです。
でも実は、がんと闘うには治療開始までの過ごし方がとても大切。手ごわい敵ながら対抗手段はずいぶんと増えています。知っておくべきことも多く、よりよい治療法を選択できるよう情報収集は絶対に必要です。また一方、一人で抱え込まないのも大事なこと。そこで、どんな情報源があり、誰に何を聞き相談したらよいのか、改めてまとめておきましょう。
●セカンドオピニオン。他の病院の専門的な医師に意見を求めます。必ず受ける必要はなく、あくまで納得ゆかない時の手段です。
●かかりつけ医。診断を受けたと報告してください。普段の状態や薬について「診療情報提供書」を書いてもらうと、連携して診てもらうことが可能です。
●インターネット。国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス」のサイトに、がんの情報や、全国のがん診療連携拠点病院の相談窓口などが出ています。
●家族や友人。気持ちを話して、お互いの気持ちを分かりあうことも大事です。情報を探すにしても一人では大変ですから、手分けしてもらいましょう(ただし、病名だけでなく進行度など病状が詳しく伝わっていないと、単に一般的な情報の山ができるだけですので要注意)。
●患者会。同じ病気の患者さんの先輩がいてお話を聴けると参考になります。がん診療連携拠点病院では、その病院の患者会や集まりがあることも。
●がん診療連携拠点病院などの相談窓口。分からないことの解決のため、交通整理をして相談先を教えてくれます。
●医療ソーシャルワーカー。医療費などについて相談に乗ってもらえます。
●闘病記などの書籍。ただ、闘病記については著者の病状と同じことは原則ありませんので、心構えなどのみ参考に。
「治る」情報に振り回されないで
さて、情報収集して、よく考えてくださいと書きました。でも、氾濫する〝がん情報"の中には正しくないものも少なくありません。善意から間違った情報を教えてくれる人もたくさん出現します。何を信じるかはあなた次第、自由です。しかし正しい判断をしたいのなら、情報の信憑性を見極めることが不可欠です。
それにはどうしたらいいか。まずは、情報源を確認することです。情報の内容に立ち入る前に、誰が言ったことか、どういう立場の人が発信したものかを確かめてください。発信者やその立場が分からないものは、最初から除外した方が安全です。また、「治る」と言い切ってしまっているものも、信じてはいけません。生命現象に対して「絶対こうだ」という語法を使う人は、自ら嘘つきだと告白しているようなものです。
自分には信憑性を確かめるなんてできない、あちこちから情報を集めても消化しきれずあっぷあっぷしてしまうという方もいることでしょう。そうであれば、とにかくまずは身近にいる医療者たちを信じていただくことが一番です。彼らは真摯に、「治したい」「良い医療を提供したい」という一心で、がん医療に取り組んでいます。あなたに寄り添って、同じ方向を見て、闘病を支えてくれる伴走者として、できる限り期待に応えようとしてくれるはずです。