森勇介・大阪大学大学院工学研究科助教授インタビュー
次々に分野の専門の方々とコラボレーションできたのが大きかったと思います。で、そうやって様々な人と屈託なく組めるようになったのは、親父に逆らえずに萎縮してしまうという私のトラウマをメンタルトレーニングによって取ってくれた方がいたからです。その方とは米国に学会へ行った帰りの飛行機で偶然隣り合わせたんです。そうやって考えると、人の縁て不思議ですよねえ。
――さて、これからどうしますか。
世界中の色々な材料を結晶化したろう、と思っています。たんぱくより、もっと凄いものがあるんじゃないかと探してると楽しいです。
実は既に取り組んでいる材料がありましてですね、青色発光ダイオードでよく知られているGaNという半導体があるんですが、これの結晶を液相から簡単に育成する方法を開発してしまいまして、これには10社から共同研究の申し出が来ています。
――ええっ。
不可能だと言われていることがあれば、僕らは挑戦します。それまで誰もできなかったことが新しいアイデアによって、可能になってしまうということが実際によくありますのでね。親父の言っていたことでホンマやったなあと思うのは、工学の世界ではできたもん勝ちなんですよね。これが理学部だったら、なぜ結晶ができるのか解明しないといけないので、勘と運で研究をやるタイプの私には向きません。また京大工学部は阪大より賢い分、理屈っぽい。「できたらエエやん」というカルチャーのある阪大工学部へ進んでホンマに良かったなあと思っています。
結晶化は物質の世界のことですけど、人の組織も同じだと思うんですよね。何も成果物が出てこない組織で、メンバー間でのコミュニケーション能力を上げたら成果が出るとか、異分野の人を加えたら成果が出るとか、ね。医療の世界にも、いろいろ「不可能」と言われていることはあるようなので、挑戦する方がいたら一緒にやりたいですね。
(略歴)
66年、大阪府生まれ
89年、大阪大学工学部卒業
93年、大阪大学大学院工学研究科博士課程を中退、助手
99年、同講師
00年、同助教授
05年、大学発ベンチャーの(株)創晶を設立、代表取締役兼任