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ニュース〜医療の今がわかる

官民と公私

周産期医療の崩壊をくいとめる会から、こんなリリースが送られてきました。非常に驚きました。と同時に感激もしました。


福島県立大野病院事件を無駄にしないために
――妊産婦死亡した方のご家族を支える募金活動を始めます――
2008年9月22日
周産期医療の崩壊をくいとめる会 代表 佐藤章

 さる8月20日に一審福島地方裁判所で加藤克彦医師に対する無罪判決が出されてから1カ月になります。加藤医師の現場復帰も決まりました。ご支援くださった多くの方々に厚く御礼を申し上げます。

 しかしながら、これで物事がすべて片付いたと考えては、加藤医師も単に医療に従事する貴重な時期を無駄にしただけになりますし、何より亡くなった方やそのご家族が救われないと考えます。

 当会としても、様々な取り組みを今後も続けていきたいと考えております。
 出産の際に不幸にしてお亡くなりになった方を忘れず、そのご家族を支援する活動を、当会として新たに始めることといたします。

 日本の妊産婦死亡率は世界屈指の低さを誇りますが、それでも年間50人ほど、お亡くなりになる方がいらっしゃいます。残されたご家族は悲しみの中、乳児を抱え大変なご苦労をなさることになります。来年からは脳性マヒを対象とした無過失補償制度も始まりますけれど、その救済の網からも漏れてしまっているのが現状です。こうした方々の生活の少しでも支えとなるよう、広く募金を募り、それを原資に支援のお金をお贈りして参ります。


次の口座で募金をお受けいたします。ご賛同いただける方の、ご協力をお願い申し上げます。

口座名   周産期医療の崩壊をくい止める会
口座番号  みずほ銀行  白金出張所 普通 1516150

連絡先:
周産期医療の崩壊をくい止める会 事務局
E-mail; perinate-admin@umin.net、 TEL 080-7031-3032
担当 松村


私も謹んで募金させていただきます。


ちょうど5日前に産科無過失補償制度がおかしくなりそうだという
エントリーを書いたばかりでしたが
死亡してしまった方やご遺族は、そもそも新制度の補償対象外ですから
募金が変な所に使われずに、まるまるそういった方々へ渡るなら
この取り組みの意義は大きいと思います。
(収支報告は不可欠ですね)


それと同時に別の感慨もあります。
医療側、患者側それぞれの内側で支援しあうというのは
今までにもあったと思います。
今回のは、その範囲を突き抜けているということ
医療者側から動きが出てきたということ
言われてみればコロンブスの卵で
なぜ今まで誰もしていなかったんだろうと思いますし
そもそもロハス誌が目指していて、でも果たせていない
「医療者と患者との架け橋」になれるかもしれないと感じます。


あとは、これに、どの程度の医療者が協力するのか
それによって非医療者まで巻き込むことができるかどうか
決まると思います。
隗より始めよ、というヤツですね。


歴史が動くかもしれない。
今後に注目したいと思います。

明らかに、今までの常識では説明できない動きです。
でも、何がどう今までと違うのか

説明しようとしても言語化できず、もどかしい1週間でした。


ただ、真剣に悩めば答が向こうからやってくるというのは本当かもしれません。
小松秀樹先生から送られてきた全く別件のメールに
「民による公益の追求」という一言が入っていて
あぁまさにこれだ、と思い当たったのでした。


今まで何の気なしに「公立病院」という言葉を使ってきました。
あれは自治体が設置主体の病院で、「公」が設置した病院ではありません。
でも世の中では慣用として
「官」と「公」とが自動変換されていることに気づきます。


「公」「私」は主として行動領域を区分する概念であり
「官」「民」は集団の属性を区分する概念ですから
「官」に属する人間が私益を追求することも
「民」に属する人間が公益を追求することも可能です。
なのに、「官」の関与することこそ「公」だという摺りこみをされていたわけです。


もちろん「官」に私益を追求してもらっては困ります。
でも逆はどうでしょう。
「民」が「公」の役割を果たしても構わない
そのことに「官」のお墨付きがなくとも構わない
はずなんです。本来は。


なに言っているんだ当たり前じゃないか
NGO、NPOって、そういうもんじゃないかと
思った方もいらっしゃるでしょう。
でも日本では、官のお墨付きがないと社会的に認めてもらえないことが多いし
お墨付きを利用して私益を追求する「なんちゃって」な団体も見聞きします。
お墨付きなしに、志だけで公益増大をはかっている団体も存在はするのでしょうが
その志が世の中全体に伝播・共有されているような活動を寡聞にして知りません。


何度か問題提起したように
今までの医療界はお行儀がいいというか何というか
「官」から何か指図があるのを待っている
指図がないと文句を言い
おかしな指図だったらそれにも文句を言う
内田樹さん言うところの庶民的姿勢がとても強いなあと感じていました。


そこに今回
民ならではの柔らかさと素早さで「公」を追求しようとする人々が現れた。
官の関与など要らない、自分たちにできることは社会に役割を果たそう
世の中が信用するかどうかは、その行動だけにかかっている、と。
まさに自立・自律する市民的姿勢であり、しかも万人に関係のある医療領域。
この志がもし伝播・共有されていくならば
現下の社会保障危機も何とかできるんじゃないか
日本人だってやりゃできるじゃないか
こんなことを思うのです。


自分の頭の中にも無意識に摺りこまれていた
「官」=「公」の錯覚を言語化できたこと
今回の壮挙に対して個人的にも感謝したい気持ちです。


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