総選挙直前企画 各党の医療政策を聴く②民主党
(そのために必要な特にお金はどの程度で、どのように賄いますか)
日本の医療費は対GDP比8.1%ですが、これをOECD諸国の8.9%にまで可及的に速やかに到達させる必要があると思っています。ただ、その後医療費がどんどん増え続けるのではないかという心配がありますよね。では医療費がどうやって増えていくかというというのを考えてみます。人口動態統計と高齢化率と現在の受療実態から将来の診療実日数が推計され、それに技術革新係数をかけると将来の医療費が推計できます。技術革新係数はマッキンゼーによると1.4%という数値と、デービット・カトラーの論文には1.0%という数値があります。これを高位と低位にして、この間に入るだろうと考えられます。仮に日本の総医療費対GDP比を2015年までに先進国平均の9.4%まで上げるとします。技術革新を除外した日本の医療費は2022-3年ぐらいがピークですから、2025年の推計が大事です。都道府県別70歳以上一人当たり医療費と人口10万人当たりの保健師の数の関連をみると逆相関していて、保健師の数が多いほど高齢者の医療費は低くなるという結果でした。長野県の高齢者医療費は平均よりさらに15%低くなっています。長野県では医師や保健師などによる地域保健活動が盛んですが、この長野モデルが日本の予防医療の一つの指標だと考えています。せめて長野県の2分の1の効果だとしても、2015年に9.4%に引き上げても2025年には10.1%。技術革新係数を高位の1.4%で計算すると、2015年に9.4%まで引き上げても、2025年には13.3%。低位だと11.3%です。各国の推計を見ると2025年に先進国は13-15%以上になりますから、日本は今一気に先進国並みに医療費を引き上げたとしても、保健活動、つまり予防医療に力を入れればそこまでいかないということになります。そのためには医療人材が必要です。医師需要誘発説ならびに医療費亡国論などはありえないということが分かってきます。
仮に金額を大まかに言いますと、総医療費対GDP 比はOECD平均8.9%、日本は8.1%で0.8、総医療費で言うと4兆円です。現在の総医療費は41兆円で国民医療費は33兆円です。4兆円のうち国民医療費に相当する金額は3.2兆円です。国民医療費の35%が公費ですから、計算すると大体8-9000億円が予算として必要ということになりますよね。予算として先進諸国並みに9000億ぐらい必要だと思います。これは医療費に限定した総論であり、それをやろうというのが我々の考えです。
民主党は無駄をなくすと言っていますし、国民もその事に期待しています。これがどういうことかを見てみますと、国の一般会計と特別会計を合わせた純粋な歳出は206兆円です。昨年まで公共関係事業費や防衛関係事業費など「事業別」に出されています。「事業別」とは各省庁の各局が「○○事業」としてやっているものです。いくつもやっているので同じ事業の中に施設費や人件費が重複して入っています。民主党は企業会計と同じように「『目別』で出してほしい」と要請を続け、昨年9月に財務省から「目別」の歳出が提出されました。今まで政府与党側は206兆円の80%を占める国債費、社会保障関係費、地方交付税交付金は"聖域"で削れない部分だと言っていましたが、目別に見直すと、相当するのは65.5%でした。つまりダブっていたということです。残りの34.5%、71兆円には再考の余地があるということです。これだけ削れる対象が出てきたということです。ここで無駄な事業はないのかという話になり、「事業仕分け」をやりました。その結果、7000億円のうち1800億円は削除できる、26%はできるということが分りました。87事業だけに絞ったのですべてがそうとは言えませんが、26%の半分でもできれば12-3兆円は出てきます。10%でも7.1兆円です。無駄遣いの捻出で9.1兆円、この他を加えて4年後には16.8兆円を出せると考えています。
これは個人的な考えですが、医療分野における財源はさらに捻出できます。まず、国民医療費33兆円の20%が企業負担の保険料ですね。非正規雇用を解消して正規雇用とし、せめて以前の25%のレベルに戻すことです。被用者保険の保険料率を8.2%に統一することで9300億円の収入増になります。小泉構造改革以降、年収200万円以下の層と、年収2000万円以上の層の2極が増えました。しかし、現在の被用者保険も国民健康保険も年間収入、所得の上限が低く設定されており、それ以上の収入、所得の方の保険料は増えません。上限を現在の5割増し程度にするだけで5000億円近い収入増が見込めます。高額療養費の1%の定率部分を廃止して現状の上位所得者のさらに上位の所得者を設定することや、たばこ税の増税など、トータルで少なくとも数兆円は出るだろうと私は考えています。