文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

あるのに使えない5

アナキンラ

開発してもらえない CAPSに効く薬

このコーナーでは、様々な原因で医薬品や医療機器のラグ・ギャップに悩む患者の方々に、どういうことで苦しんでいるのか、直接書いていただきます。

 CAPS(クリオピリン関連周期性発熱症候群)という病名をご存じですか?
 初めて耳にされた方がほとんどだと思います。発症は100万人に1人、日本には50名ほどしか確認されていない、とても珍しい病気です。お医者さんにも、まだあまり知られていません。
 遺伝子の変異などにより乳児期から発症し、炎症物質が絶え間無く作られます。この炎症物質が体内を巡ることにより、体中のいたる所で炎症や障害を引き起こし、進行していきます。
 症状は、毎日40℃に及ぶ高熱、じんましん様発疹、慢性無菌性髄膜炎、激しい頭痛や嘔吐、進行性難聴、視力障害、低身長、関節の変形や強い痛みなど。炎症が長く続くことで臓器にも障害を起こし、生命的な予後もあまりよくありません。
 そのような重篤な病気に対して、炎症物質を抑え、障害の発生を抑える事ができる「アナキンラ」という薬があります。元々は成人用のリウマチ薬としてアメリカで2001年に承認されたものですが、CAPSの子供たちに劇的な効果がありました。毎日皮下注射をすると、それまで痛みで泣き叫んでいた子供たちが、普通に日常生活を送れるようになるのです。
 しかし、大変悲しいことに日本では承認されておらず、使うことができません。
 世界では患者数の少ない疾患へは適応拡大で使われることも多いため、アナキンラをCAPSの薬として承認している国はありません。そのような薬は日本の現在の制度での承認がとても難しくなっており、製薬会社も『採算が取れない』などの理由から開発に乗り出してくれないのです。
 とても効果のある薬が存在するのに、使うことができないのです。副作用などの問題ではなく、患者数が少ないからという理由なのです。
 毎日、高熱や痛みを訴える我が子に何もしてあげることができず、ただ見守ることだけしかできないのは、耐えている子供もそれを看病する家族もとてもつらく、非常に残酷です。
 アナキンラを日本で使うことができたら、と強く願わずにはいられません。
 家族にとっては、かけがえの無い一つの命です。たとえ患者数が少ない病気であっても平等に薬を開発し、大切な命を見捨てないでいただきたいのです。
 CAPSの患者の多くはまだ小さな子供たちです。現在は「難病・特定疾患」に認定されていないこともあり、この子たちの将来はどうなるのだろうかと不安は増すばかりです。
もしアナキンラが開発され承認されたとしても、患者数が少ないために相当高い薬価になると予想されます。患者・家族の経済的負担という新たな問題が生じる可能性が高いのです。
 このような薬の開発問題・薬価の問題は、希少疾患の患者にはとても大きな壁となっております。
 一日も早くすべての患者が必要としている薬を、よりよい環境で使えるようになる日が来ることを願って、私たちは活動しております。
(CAPS患者・家族の会 嶋津恵美)

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
掲載号別アーカイブ