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がんの分子標的⑤ がんが特に必要とするもの

103-2-1.JPG 正常細胞にも備わっている仕組みではありますが、通常は利用頻度が低く、一方でがん細胞は盛んに利用している機能も存在します。この機能を妨害することによって、がんを攻撃しようとする薬が実用化されています。

103-2.1.JPG 細胞は日々、ゲノム(全遺伝情報)の情報を元に様々なタンパク質を作り出しています。ただ、何がどれだけ出来るかは、入って来る材料や温度などにも左右され、必要量ぴったりになるわけではありません。タンパク質は複雑に入り組んだ構造をしているため、不良品も出来やすいもの。また、特に細胞分裂の際には、分裂のステージごとに必要なタンパク質が移り変わるので、次々に作られ、すぐ不要になっていきます。

 過剰だったり不要になったりしたタンパク質がそのまま細胞内に溜まり続ければ、様々な不都合が生じます。塊になって機能異常をもたらしたり、ひどい場合には細胞死(アポトーシス)をひき起こしたりすることもあります。

 そこで不要なタンパク質が増えてくると、細胞内に「プロテアソーム」と呼ばれるタンパク質分解装置が現れます。

巨大な装置

 「プロテアソームは、細胞の中で作られたタンパク質を分解する装置で、約100個もの分子からなる酵素の巨大な集合体です。過剰に作られたり不要になったりしたタンパク質を排除しています」と話すのは、がん研有明病院の照井康仁血液腫瘍担当部長。「過剰・不要なタンパク質に3段階の酵素が関与して、ユビキチンという物質が取り付きます。ユビキチンは『このたんぱく質を分解しますよ』という目印で、それを頼りにプロテアソームが取り込んで分解を行います」(ユビキチン・プロテアソームシステム)。
図1.JPG
 通常の酵素は特定のタンパク質しか分解できませんが、プロテアソームはユビキチンの付いたタンパク質なら何でも分解できます。プロテアソームがあることによって、必要な時に必要なタンパク質を働かせることもできます。あるタンパク質が細胞内にある時は生化学反応が進まず、プロテアソームが分解すると次の反応に進む、といった仕組みで、細胞周期や代謝、シグナル伝達、免疫応答、DNA修復など様々な活動を滞りなく進行させていると考えられています。

 こうしたプロテアソームの働きを阻害することで、がん増殖を抑制するのが、多発性骨髄腫(骨髄のがん)などの治療に用いられているボルテゾミブ(商品名ベルケイド)です。

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