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診療報酬 初歩の初歩

とてつもなく複雑な仕組み。

 前項で、診療報酬とは何かをご説明しました。その診療報酬の中身ですが、これがとてつもなく複雑な内容になっているのです。細部まで理解しようと思ったら、何年もみっちり勉強しなくてはならないほど。ですので、ここでは「診療報酬は何がどう複雑なのか」ということに絞って、大まかにご説明します。
 診療報酬は2年ごとに改定され、厚生労働大臣告示による「医科診療報酬点数表」として発売されます。
 この点数表は、医療行為の種類や医療機関の規模などで約8300項目に細分化されています。さらに、診療報酬を計算するための条件や用語の定義などが示されていて、その道一筋の専門家であっても解釈に悩むほどなのです。実際、厚労省自身も、点数表の運用に関する手直しを加える「疑議解釈」を、医療機関向けに追加で配布しています。さらに、薬や医療材料の価格を示した表があり、そこには1万数千に上る価格が示されています。
 なぜ、ここまで複雑になってしまったのでしょうか?
 まず、新しい技術が開発されるたびに、点数表に項目が追加されるのが大きな理由です。新しい技術が加わったからといって、それまで使っていた技術を使わなくなるわけではないからです。また、老人保健法によって、お年寄りにだけ適用される料金体系が生じたことも理由のひとつ。他にも、実に多種多様な追加事項があり、それらをどんどん継ぎはぎしていった結果、今の形になってしまったのです。
 こうなると、患者はもとより、現場で忙しく働く医師も詳細な内容まで理解することはほぼ不可能。かくして、患者も医師もその正しい価格を知らないまま診察や治療を進め、最後に金銭のやりとりがなされる--。これが、現状です。
 現場の医師が診療報酬をすべて把握して、お金の計算をしながら治療にあたるのが患者にとっては本当にいいことなのかという疑問はあります。ですが、「何かのサービスを受けて、金額を納得した上で適正な対価を支払う」というごく一般的な感覚からしてみると、今の診療報酬の在り方に大きな違和感を感じてしまうのも事実でしょう。

誰が決めてるの?  中央社会保険医療協議会(中医協)という、厚生労働大臣の諮問機関があります。中医協は、診療側委員、支払い側委員(保険者)、公益委員の3者の代表で構成され、診療報酬の内容や点数について審議と答申を行います。それを受け、2年ごとに診療報酬は改定されます。  診療報酬の中身を実質的に決める力を持つ中医協ですが、昨年、その中医協を舞台に、診療報酬の引き上げを画策した汚職事件が起きました(日歯連事件)。そもそも、年間32兆円にも上る国民医療費は私たち国民のお財布から出たものですから、一部の利益のために診療報酬を手心に加えるなど言語道断。その反省から、中医協委員のうち大学教授など公益委員で構成する「診療報酬改定結果検証部会」を新たに設けるなど、中医協の改革が進められています。

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