介護保険、こう変わる。
ここからが大きく変わる点です。まずは介護認定のクラス分けが変わります。といっても自身や家族に利用者がいない場合、ピンと来ないでしょうから、少し丁寧に説明します。
現在の認定の流れは、こうです。住んでいる自治体へ申し込むと、調査員が来て、決められた項目について調べていきます。その結果をコンピュータに通して、介護にかかる標準的な時間を算出します。
その時間と主治医からの意見書を参考に、「認定審査会」というところが、介護が必要か否か、必要だとしたらどの程度かを判定し、「自立」「要支援」「要介護1~5」にクラス分けします。「自立」以外の6クラスの人が介護サービスを受けることができます。
受けられるサービスは、ひらたくいうと高齢者が自立して暮らすための手伝い全般で、高齢者が施設へ入所したり、通ったりするのも含まれます。そしてサービスには全国一律の価格が定められています。介護度が重ければ重いほど、サービス支給額が上がっていき、最高の要介護5なら、月額35万8300円が上限になります。ただし、うち1割は自己負担です。また病気を治療する場合の費用は医療保険で賄われます。
クラス分けが変わる、というのは、現行であれば「要支援」「要介護1」の2クラスに入れられる軽度の人たちを、要介護度が重くなるのを防げそうかどうか判定し、「要支援1」「要支援2」「要介護1」の3クラスに分けるというものです。
これまでのクラス分けが、単に支給限度額が異なる6段階だったのに対して、今回の「要支援」2段階の人たちには、介護サービスは提供されなくなります。変わりに提供されるのが介護予防サービス。
介護でなく介護予防、これがポイントです。そして、介護の場合はサービスの利用時間によって金額が積み上がっていく出来高払いなのに対し、介護予防の場合は最初に金額が決まっている定額制です。
何のことやらチンプンカンプンでしょうか。もう少し詳しく説明する前に、なぜ厚生労働省がこのような案を生み出したか説明しましょう。
同省は、「要支援」「要介護1」の認定を受ける人が激増している(左表)ことに危機感を持っています。保険である以上、保険料を払っている人が認定を受けるのは当然の権利です。ただし、自立した生活を送ってもらうのが目的なのに、認定が自立を妨げるようでは本末転倒です。
同省では、軽度者の急増は介護サービスを提供する事業者が需要を掘り起こした結果とみており、軽度者の中には家事代行などを頼んで体を動かさなくなった結果、どんどん介護度が重くなってしまう人も多い、と分析しているのです。
この分析に鼻白む人も多いとは思いますが、毎日体を動かした方が健康に良いのは確かです。けしからんと怒る前に、もう少し詳しく見ていきましょう。