介護保険、こう変わる。
なぜ変更されるのですか?
介護保険制度が始まって5年。国会などで激しい議論が行われてから10年以上経ってしまいましたので、何を目的に作られたか、忘れてしまったと思います。
高齢化社会へ向け、高齢者の自立を助ける介護負担を社会全体で分かち合おうという基本理念は当然ありました。でも当時は、「増大を続ける老人医療費に歯止めをかける」という役割も期待されていたのです。思い出しましたか。
入院する必要もない高齢者が、帰宅できずに入院させられて医療保険財政を圧迫していることが社会問題になっていました。そんな人たちを費用の低い介護保険制度で面倒みれば、事態が好転すると期待されたのですね。
けれど結果的にみると、医療費の伸びは止まらず、介護保険の総費用自体もスタートした2000年度の3兆6000億円が05年度には6兆8000億円まで膨れ上がってしまいました。介護保険の存続自体が危うい状況になってしまったわけです。これが今回の改正の一番大きな背景です。
では、簡単に現在の介護保険の仕組みをおさらいしましょう。意外と見落とされがちなポイントが、介護保険は誰かにサービスを恵んでもらう「福祉」ではなく、自分たちで費用を負担して必要な時にサービスを受ける相互扶助の「保険」だ、ということ。
そうはいっても費用の半分は税金だ、とか、高齢者に相互扶助を言うのは弱い者いじめだ、といった議論は導入前からありましたけれど、今回も「社会保険」としての位置づけは変更されていません。とりあえず、現行制度は「社会保険」であって、「保険料を払う」(負担)と「サービスを受ける」(受益)のが一セット。これを大前提に話を進めます。
となれば、まず負担のことが気になりますよね。ただし、負担の方をマジメに考えると、それこそ福祉と社会保険の役割分担の議論になりますし、消費税の税率アップの問題とも絡んで話が複雑になります。また、保険料の金額が自治体によって異なって一律に扱いづらいという現実もあるため、今回は詳しく取り扱いません。受益の方に絞ります。
さて、いよいよ本題。何がどう変わるのか、順に説明します。
現在サービスを受けることができるのは、①65歳以上の高齢者(1号保険者といいます)か、医療保険に加入している40歳以上65歳未満(2号保険者)の人で老化に伴う病とみなされる15の「特定疾病」にかかっている。かつ、②「要介護」もしくは「要支援」と認定された人です。
今回の改正で、「特定疾病」に末期がんが含まれることになりました。医療機関以外の場所で療養したい人にとっては朗報になるはずです。40歳で区切られるのは、保険料を支払っているのが40歳以上の人だからです。もっと若い人にも支給すべきだという意見は、「保険」を前提に考えると無理があります。