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何が起きているのか、どうすればよいのか。認知症の真実

診断と治療はこのようにします。

 認知症の原因が実に多岐にわたることは理解していただけたことと思います。素人が原因を特定するのは無理ですし、治るものかもしれませんので、兆候が出たなら、とにかく早く医療機関へ行きましょう。
 ただし、自分や家族が認知症でないか、なんて普通は考えたくもないことです。そうやって躊躇しているうちに、初期の受診機会を逃す例が非常に多いようです。
 そこまで悪くなる前に何とか説得して受診すべきなのですが、どうしても手詰まりになってしまったら、近所の保健所、もしくは各地域に設置されている「老人性認知症疾患センター」(ただし東京都にはありません)へ、家族だけででも行きましょう。医師や保健師などの専門家が相談に乗ってくれます。
 少々イレギュラーながら、市町村の介護予防検診を受けさせる、あるいは介護保険の適用を申請してみるという手もあります。大事なことは、自分たちだけで抱え込まずに、早く専門家に助けを求めることです。グズグズしていると共倒れしかねません。
 この話は、とりあえずこの辺まで。受診はできたものとして話を進めます。
 医師は、まず患者さんの症状や経過がどの程度のものなのか、本人と家族の双方から聴き取りをします。この段階で、心配いらないと判断されるものもあります。
 やはり症状があり、それが一時的であったり一過性だったりでなく持続的ということになると、まず血液検査などで背後に隠れた疾患がないかチェックします。異常がない場合、次に精神障害でないかをチェックします。ここまでで引っかかる場合は、原因が他にあって症状が出ているものですので、その原因の治療に移ります。
 症状はあるけれど、ここまでのどこにも異常がないとなると、どうやら認知症らしいとの判断になります。CTやMRIなどの画像検査で脳血管に障害がないか調べ、脳血管性か神経変性か、はたまた別の疾患かだんだん絞り込んでいきます。
 診断がつくと、治る可能性があるかどうかも分かります。前項でも書いたように、アルツハイマー型、脳血管性の2大原因の場合、中核症状を治すことはできません。
 ただし、アルツハイマー型の場合、投薬によって症状を多少改善できる場合があり、また悪化するスピードを緩やかにすることもできます。
 脳血管性の場合は、脳卒中発作を起こさなければ、通常の老化以外には悪くなりません。ですから、血圧や血糖値を食事や薬でコントロールしたり、高脂血症の薬を飲んで動脈硬化の進行を防いだりといった治療が行われます。
 さらに、モノを盗まれたなどの妄想、抑うつ、怒りっぽくなるといった周辺症状については、睡眠薬・向精神薬を使ったり、漢方薬を使ったりします。これらは周辺症状の治療のために保険で認められている薬剤ではありませんが、相当に緩和できます。家族だけで抱え込んで、どんどん悪化させてしまった場合と比較すれば、QOL(生活の質)は雲泥の差になります。

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