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何が起きているのか、どうすればよいのか。認知症の真実

こんなことが認知症の原因になります。
10-1.3.JPG 次に、なぜ認知症が起きるのか見てみましょう。直接的には、脳細胞が単なる老化以上の速さで死んでしまうか、脳細胞の活動レベルが極端に下がってしまうかが原因です。そして、脳細胞に影響を与えたのが一体何なのかによって対処法が異なり、それぞれに診断名がつきます。
 上の表をご覧いただくと、実に多くの原因があることが分かると思います。
 最も患者数が多いと考えられているのは、アルツハイマー型です。脳の神経細胞が全体的に失われ、脳が縮んでしまいます。徐々に発症し、ゆっくり悪化します。初期に現れるのは、直近のことが覚えられないモノ忘れです。本人には病気との自覚のない場合が多く、最終的に知能や人格が損なわれます。なぜ神経細胞が失われるか一部の原因は解明されてきましたが、まだ分かっていないことも多くあります。
 次に患者の多い脳血管性は、読んで字のごとく、脳の血管が破れたり(脳出血)詰まったり(脳梗塞)して、その血管によって養われていた神経細胞が死んでいくものです。脳出血と脳梗塞を総称して「脳卒中」(vol.25参照)というのは、皆さんもご存じですね。
 この場合、ある特定の部分の細胞がまとまって失われるため、健全な能力と失われる能力が混在します。記憶力は失われても人格や判断力は残ることが多いようです。また、普段は進行が止まっていて、脳卒中の発作を起こす度、ガクッガクッと階段状に能力が失われていくのも特徴です。
 アルツハイマー型と脳血管性の2つで全体の7割程度を占めると推計されています。2つとも、いったん失われてしまった能力を取り戻すのは難しいのですが、医療が適切に施されれば悪化のスピードを緩めることは可能です。
 一方で、治療を受ければ改善する可能性のある認知症もあります。2大認知症に比べれば多くないとはいえ、認知症の母集団は大きいので、結構な数の患者がいます。
 脳挫傷などの外傷性のもの、髄膜炎や脳炎などの感染症によるもの、ビタミン12欠乏などの代謝・栄養障害によるもの、甲状腺機能低下などの内分泌疾患によるもの、正常圧水頭症などが代表的です。アルコールや向精神薬などによる脳機能低下も見逃せません。
 それから、認知症とよく似ているけれども別の病気という場合があります。何かの精神的・肉体的ショックを受けた後に突然「せん妄」という急性の意識障害を生じ、幻覚や妄想が表れ、不安や焦燥感を訴えることがあります。治療で治ります。また「うつ病」(〓06年4月号参照)でも、認知症と似た症状が現れることがあります。これも治療で改善できます。
 このように、原因が千差万別であること、治療で改善するものもあること、放置しておいたら悪くなる一方であることから、一刻も早く受診して早期発見・早期処置することが何より大切と言われるわけです。

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