何が起きているのか、どうすればよいのか。認知症の真実
皆さんが最も関心があるのは、どうやったら認知症を予防できるかだろうと思います。
いきなり身も蓋もないことを書きますが、アルツハイマー型の場合、残念ながら原因が分かっていませんので、確実な予防法もありません。
ただし経験的には、脳に刺激を与え、その機能を積極的に使ってあげることで、発症を予防し、もしくは早期のうちなら進行を和らげることができるのでないかと考えられています。
具体的には、家に閉じこもらない、積極的に人と会話をする、趣味など色々なことに関心を持ってみる、といったことになります。何か選択肢で迷った時には、面倒だなと思う方を選んで時間をかけても完遂するくらいの心がけでいると、ちょうどよいかもしれません。手や足に刺激を与えるのもよいとされていますね。
じゃあ流行の「脳を鍛える」ゲームを買ってこようと思った方、それも結構ですが、できるなら屋外で体を動かすことを考えましょう。
というのが、アルツハイマー病になった人々は、そうでない人々に比べて「運動が嫌い」「日曜日は寝てばかりいる」「気を失うくらい頭を打ったことがある」「長く続けている趣味がない」場合が多いという調査結果があるからです。思い当たる方は、今のうちに改めることをお勧めします。
何より、運動不足になってしまうと、他の病気になりやすくなり、ひいては認知症のもう一つの大集団、脳血管性障害すら呼び寄せてしまう可能性だってあるのです。
既に説明した通り、脳血管性認知症は脳卒中で脳細胞が死ぬことによって起きます。つまり認知症を予防したかったら、脳卒中を予防すればよいことになります。
血管が詰まるのも、血管が破れるのも、まず血管の内壁に脂肪や糖がへばりつくところから始まります。それ(血栓)が剥がれて細い血管に詰まれば梗塞ですし、柔軟性を失った血管が切れれば出血です。
このように動脈に色々くっついて細く硬くなった状態を動脈硬化というのでした。動脈硬化と切っても切り離せない悪循環の関係にあるのが、高血圧(〓05年12月号参照)、高脂血症(vol.22参照)、糖尿病(06年1月号参照)などの生活習慣病です。ということは生活習慣病の予防が、認知症の予防にもつながるわけです。
具体的には、塩分摂取を控えること、肥満しないこと、偏食しないこと、暴飲暴食しないこと、適度に運動すること、規則正しい生活をすることなどを心がけるとよいでしょう。
毎度お馴染みの「当たり前のこと」に、今月も行き着いてしまいました。これらは、発症してしまった後でも大切なことです。
介護も大変重要です。 認知症患者は不安や孤独を抱えています。また食生活も乱れがちなので、体を弱らせやすいです。周囲が受け止めて目配りしてあげないと、QOLがどんどん下がります。それは医療より介護の守備範囲で、患者にとって本当に大切です。ただし、家族だけで抱え込んだりすると共倒れになりますので、知人や公的な支援を上手に使うことを心がけましょう。