診療報酬第2弾 病院の行動原理教えます。
利益率の低い大規模病院。
ことし4月、全国の大規模病院を青ざめさせる出来事がありました。過去最大3・16%の診療報酬下げです。
ちょうど1年前の05年12月号で、「診療報酬」とは何か、という基本的な事項を特集しました。おさらいすると、診療報酬とは、国が決めた「医療行為のメニューと価格」であり、その1点が10円に換算されるのでした。そして、患者の皆さんが支払う金額は、そこに自己負担率(一般的な場合3割)を掛け合わせたものになるのでしたね。
話を戻します。引き下げといってもわずか3%じゃないかと思うかもしれません。しかし、大規模病院の利益率が、もともと3~4%しかないとしたらどうでしょう。
病院が普通に診療行為を行うだけでも、それ相応のお金が必要です。土地建物、医療機器、医薬品、そしてスタッフの人件費、それぞれにお金がかかります。特に医療は人対人のサービスなので、医師や看護師などスタッフの人件費が支出の半分以上を占めます。良い医療を提供しようとするなら、利益率も低くならざるを得ません。
ちょっと待て、外来診療にかかる人件費は受診者が多かろうが少なかろうが一定なのだから、受診者であふれかえれば大きな利潤が出るはずだ、と思ったでしょうか。
理屈はそうです。しかし下表をご覧ください。
医療費というのは、飲食店のチャージにあたる基本料金と、付け加えた医療内容ごとにかかるオプション料金との合計で計算されます。大規模病院の基本料金部分は、2回目以降の外来患者さんに関して、他の機関よりこんなに低いのです。受診者が増えれば儲かるといっても、この程度のことです。
患者さんからすれば、設備の充実した大規模病院へ行って、なおかつ安く済むわけですから、ありがたい話かもしれません。でも、考えていただきたいことがあります。
社会が右肩上がりで成長を続けてきた時には、たとえ病院が赤字を出しても、病院の設置者(公立病院なら地方自治体、大学病院なら大学)が、穴埋めすることで何とかなってきました。とはいえこの御時世、多くの設置者から余裕が失われています。赤字垂れ流しでは、病院といえども倒産します。
赤字になる理由は、放漫経営だけとは限りません。地域への責任を果たすために不採算な診療科を維持するとか、診療報酬に定められた最低ラインより上乗せして手厚い医療を提供するといったことも、お金が要る話です。
医療は日進月歩なので、良質な医療を提供し続けるためには、機器や設備を定期的に更新する必要があります。そういった投資に回すお金を確保するためにも、ある程度の黒字は必要不可欠なわけです。
「安い」だけで喜ぶのは、自分で自分の首を絞めているかもしれません。