診療報酬第2弾 病院の行動原理教えます。
さて4月の診療報酬引き下げに戻りましょう。2年に1度の改定のたび、ほとんどの病院が右往左往するのですが、ことしは特に大変でした。たかが3%の下げとはいえ、大規模病院の場合、売上総体が大きいので億単位の減収となり、赤字転落しかねません。
ただし厚生労働省の政策は何事もアメとムチ。急性期医療に力を入れる病院には、配慮がありました。
それが表のような入院基本料の改定です。
先ほども説明したように、診療報酬は、病気の状態に関係なく算定される基本料金と、病気の状態によって変動するオプション料金との合計で算出されます。
入院の場合、ホテルに例えるとイメージしやすいと思います。泊まっただけで入院基本料が発生し、受けたサービスすなわち医療行為に応じて追加料金がかかります。
その入院基本料が、病院の陣容や成績によって、こんなに違います。そして4月から、基準値が変更されると同時に最も高い基準を満たした病院の点数が一気に346点増えたのです。
どこにも急性期と書いてないじゃないか、とお思いでしょうか。ランク分けの基準をご覧ください。主なものは「看護職員の配置数」と「平均在院日数」の二つです。
患者が重症であればあるほどケアに人手が必要で、ケアが手厚い(つまり看護職員数が多い)ほど患者の回復も早い、こういう関係にあります(06年5月号「看護師の仕事」特集参照)。つまりこの分類は、看護職員が潤沢に配置されていて、患者を順調に回復・退院させた病院は優遇されるということを意味しています。こういう病院は、要するに急性期病院です。
入院基本料が上がると、患者さんの払う金額も高くなりそうですが、その点はご安心ください。急性期病院に入院する患者さんは、自己負担分が上限額を超え、後から払い戻される高額療養費の対象となる場合がほとんどです。
ちなみに、3月までも4月からも最高基準を満たすような病院があったとすると、入院患者さんが平均200人いるとして、入院基本料の改定による増収は日に69万円、年に2億5000万円です。
ただし、まるまる増益とはいきません。3月までの看護師配置が10対1ぎりぎりだった場合、7対1にするには45人程度の増員が必要です。社会保障分まで含めた人件費が1人600万円(年収約400万円)としても持ち出しになります。また、平均在院日数を短くすると、空きベッドができかねず、その分は一銭も入ってきません。
とはいえ、黙っていれば減収が見えている以上、急性期病院の多くが、手っ取り早い増収策として、より上のランクをめざそうと動き始めたのは、言うまでもありません。看護師の数と平均在院日数が、どれほど重大な意味を持つか、お分かりいただけると思います。