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診療報酬第2弾 病院の行動原理教えます。

政府は病院ごとに役割分担させたいのです。

 さて、なぜ大規模病院の外来は安いのでしょうか。
 前回の診療報酬特集でも説明したように、国は政策誘導の手段として診療報酬を用いています。つまり、日本の医療がこうあってほしい、という道筋に沿ったものは優遇し、そこから外れたものは冷遇するわけです。
 ですから大規模病院の外来料金が低い理由も単純です。政府・厚生労働省が、大規模病院に外来から手を引かせようと狙っている、こういうことです。
 現実には国の狙いと異なり、外来から手を引く大規模病院はありませんし、患者さんはむしろ大規模病院に集中する傾向があります。そして、来てしまった患者さんを病院が断ることはできないので、スタッフが疲弊することになります。誘導が成功しているとは言い難いのですが、かといって見直す気配も今のところありません。
 なぜ、こんな誘導をかけているのでしょうか。
 国がどんな方向をめざしているのか、大規模病院に影響の大きいところを、厚生労働省「平成18年度診療報酬改定の基本方針」を用いて表現すると、「質の高い医療を効率的に提供するため医療機能の分化・連携を推進する」、となります。
 何やら難しい表現が並んでいますが、国の政策の前提に必ず医療費抑制があることさえ知っていれば、理解するのは難しくないはずです。つまり、患者ができるだけ不利益を被らないように医療費を抑制する。こう言っているわけです。
 「分化・連携」とは、重症・緊急を要する患者さんを治療する施設と、緊急の治療を終えた患者さんの社会復帰を支える施設、慢性状態の患者さんを診る施設の3者を明確に分け、患者さんを施設同士で受け渡しすることです。
 つまり医療機関の性格をハッキリ色分けし、それぞれの守備範囲に集中させようとしているのです。そして、その先の在宅医療へ移行させようと狙っています(06年4月号「在宅医療特集」参照)。
 多くの大規模病院には、重症患者さんの緊急治療の部分が期待されており、外来は期待されていません。だから外来基本料金が安いのです。
 こんな方針を打ち出してくるのは、政府・厚生労働省が、日本の医療の現状を次のように認識しているからです。
 すなわち、必要な数に比べ病院やベッドが多すぎて効率が悪い、さらに、医療の必要がない人まで入院させるような不要な医療行為が横行している、と。この現状認識が正しいかどうか議論すると、特集が何回も作れてしまうので、そこは保留して話を先に進めます。
 病院ごとに役割を分けるのは、資源を集中的に投下する病院を決め、重症の患者さんをそこへ集めれば効率が良くなるだろうとの発想です。当然、重症の患者さんが集まる病院には診療報酬上の配慮があります。
 重症・緊急を要する患者さんの治療にあたる施設を「急性期病院」、社会復帰の手助けをする施設を「回復期・亜急性期病院」、慢性期の患者さんを診る施設を「慢性期病院」といいます。
 ロハス・メディカルが設置されている病院は、ほとんど急性期病院なので、ここからは急性期病院にポイントを絞って話を進めていきます。

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