教えて!ジェネリックのこと
前項で説明したように後発品は、医薬品の開発費のうち大きな部分を占める「有効成分探し」と「治験」の費用がかかっていません。当然、値段が安くて済むはずです。
保険診療に用いる薬の値段は、メーカーが自分で決めるものではなく、国が薬価として定めます。その基準もちゃんと決まっていて、後発品の一番手として出てくるものの薬価は、先発品の7割で設定されます(後発品が出ると、先発品の薬価そのものも引き下げられます)。
同じ後発品でも、後になって出てくるものほど、そして年を経るごと、掛け率は下がります。2割が下限ですが、後発品メーカーも赤字になってまでは作らないので、利潤を上げられる薬価範囲に収まります。
国を挙げてジェネリック医薬品の使用が推進されている(コラム参照)のは、ひとえに、この安さゆえ医療費の抑制効果があると期待されているからです。後発品に置き換え可能なものがすべて転換されると、国全体で薬剤費にかかっている約6兆円強のうち約1兆円が浮くとの説もあります。
ただし、この狙い通りに推移するか、現状はまだ何とも言えないところです。
まず、医療側が後発品に対する不安・不満を拭えていないという問題があります。公正取引委員会が行った調査では、医療機関のなんと85%がジェネリック医薬品について「安全性や情報量に不安がある」と考えていることがわかりました。
安全性に関しては、中小メーカーが乱立、技術水準に相当の差があることが影響しています。中には、1~2年だけ製造販売して薬価が下がると製造を打ち切り、残された患者が困るというような事例も過去にはありました。
この点に関しては、外資を含む大資本が続々と参入しており、また2011年3月末には、後発品を販売する場合は、先発品と同じ規格を全部そろえるよう、厚生労働省が義務づけましたので、状況は改善していくと考えられています。
情報提供に関しては、後発品メーカーのMR数が先発品メーカーに比べて圧倒的に少ないことが影響しており、後発品大手各社はその増強に努めています。
もちろん、先発品メーカーの方も、指をくわえて見ているだけではありません。
特許切れの迫った薬の剤形を改良して飲みやすくするなど、後発品にはない付加価値を付けて競争を勝ち抜こうとする作戦はよく取られています。剤形部分にも特許が絡んでいて患者の利便性が劇的に向上したりすると、実質的には有効成分の特許期間が延びたのと同じ効果をもたらすことがあります。
4月から頼みやすくなりました。 4月の診療報酬改定の際に、患者が医師に申し出て、医師が処方箋の「後発医薬品への変更可」欄に署名もしくは記名捺印すれば、たとえ処方箋に商品名が書いてあっても、薬剤師段階でジェネリック医薬品に読み替えて処方できることになりました。これによって、変更へのハードルがだいぶ下がりました。 ただし、「変更可」の処方箋は診療報酬が2点余分にかかります。また薬局で読み替えが行われた場合、初回に10点余分にかかります。
DPCとの微妙な関係。 急性期病院の入院治療に関して、実際の医療行為を積み上げる出来高払いではなく、診断分類(病名)ごとに1日の診療報酬を予め定めてしまう包括払いが広がりつつあります。これがDPC(vol.22参照)です。 DPCの場合、高い薬を使おうが安い薬を使おうが病院に入る金額は同じなので、同じ効果なら安い薬を使った方が病院経営にはプラスになります。このため、ジェネリック医薬品への切り替えが進むのでないかと見られています。